お正月なのに前年クリスマスねた引きずってるってどーよ!?なんていう
ツッコミは却下させていただく方向で・・・・
時間軸的に・・・・巳年の話でもございません(滝汗)
恋人がサンタクロースと内容がリンクしております ぺこ <(_ _)>
お時間がおありでしたらそちらをお読みの上でどうぞ♪
サンタ と 天使 アクマ が 笑う夜
自室へ戻ると、ランティスは抱えていた光をおろして白い大きな袋を手渡した。
「…袋ごと渡すサンタさんって珍しいかも…」
「……そうなのか?お前へのプレゼントとして預かっているのに俺が開けるのは
おかしいと思うが…?」
「それもそっか。普通のサンタさんは良い子にしてるみんなが寝てる間に、
プレゼントを配り歩くんだよ。白い袋にたっくさんプレゼント詰め込んでてね、
子どもたちが枕元に用意してる靴下にひとつずつこっそり入れてくの」
それは不法侵入に当たらないのだろうかという疑問が湧いたが、敢えて口に
出すことはなかった。
「私だけのサンタさんだから、プレゼントも独り占めしちゃえるんだ!ふふっ、
すごい贅沢だなー♪」
大きな袋を抱えて嬉しそうに笑うのを見ていると、掛けておいたはずの自制の
箍(たが)がガタガタと揺さぶられてしまう。
いまは流されるまいと光から視線をそらしマントを外したが、袖口やらについた
ファーがどうにも落ち着かず、結局いつも鎧下に着ている黒ずくめに着替えていた。
目の前で、という訳ではないにしろ、自分のいる室内でランティスが着替える
衣擦れの音に、光も落ち着きなく白い大袋をぽふぽふ叩いたりしていた。
着替えを済ませたランティスがその様子を不思議そうに見ていた。
「どうした?開けないのか?」
「え?あ、うん。なんだろうね、これ」
促されるまま袋を開けると、暖かそうなダークブラウンのマントの中に茶色くて
ニョキニョキしたものが包み込まれていた。
「何だ、それは…」
「う〜ん…トナカイの角のヌイグルミみたいだけど…。私が被るにはなんか、
すっごく変…かも」
たとえて言うなら…馬の頭に固定するのに相応しかろう形状だ。
「・・・これって・・・」
馬車を牽かせるのもたいがいだが、この上、コスプレまでしろとは流石の光も
するりと口に出すには憚るものがある。
「ランティスにサンタの格好させて、エクウスをトナカイにするつもりだったの
かなぁ…。イーグルたちって、時々すごくお茶目なこと考えるよね。そういえば、
ランティスの服、中庭出たら白に戻ったけど、…どうなってるんだ?」
「イーグルにコーヒーを零されて、一度着替えてる。その時に何か仕掛けられたん
だろう。ツリーのライトに反応するような染料でも使われたか…」
「ブラックライトと似たようなものかなぁ…。よく解んないけど」
何にどう反応して色が変わるか解らない以上、ファーを外したからといってもう
迂闊には使えない。いや、迂闊でなくてもあんな真っ赤な衣装はランティス的に
願い下げだった。
トナカイの角をとりあえずベッドの上に置き、もうひとつの品であるマントを
光が羽織って見せた。
「めちゃくちゃ大きい気が…。わぁ、すっごく長いっっ!引き摺っちゃう!」
足首ギリギリどころか、ヒールのある靴をあまり履かない光ではうっかり姿勢が
傾いだだけで引き摺ってしまう長さだ。
「これって、ホントに私にくれたのかな?ザズとあんまり身長変わらないって
知ってると思うんだけど…。ランティス用じゃないのか?」
とても光の実用に耐える長さとは思えない。
「間違いなく女性向けだと思うが…よく似合ってる。オートザムは年間を通して
寒冷な地だからな。その長さのマントは標準的な物だ」
「そうなんだ…。ちょっと地球で着るのは無理かもしれない」
「こちらに置いておけばいい。雪の日の遠駆けにはいいかもしれない」
可愛らしさとほんの少しの大人の女性の柔らかさを上手く引き出す品のいい色合い
だとは思うが、イーグルが選んだそれに自分の手の届かない光が包まれているのは
あまり面白くない。
そんな嫉妬を素直に認めるのも面白くはないなと難しい顔をしているランティスに、
光はまた爆弾を投げつける。
「雪が降ってても遠駆けの時はランティスがマントにぎゅっと包んでくれてるもの。
ちっとも寒く無いんだよ!また連れてってね」
「少し出るか?」
「でも…、帰ってきたばかりなのに、疲れてるんじゃ」
「NSXでゆっくりしていたからな」
「じゃあ、行きたい!せっかくもらったんだし、今日はこれ着ていってもいい?」
複雑な想いを抱えながらも、かえってそのほうがいいかもしれないとランティスが
気持ちを切り替える。
「ああ…」
棚に置いていた剣の柄の魔法石に軽く右手を触れると、立ち上る蒼い炎に覆われ、
ランティスの身体は見る間に漆黒の鎧に包まれた。
「わぁ、そんなふうに身に着けてたんだね、その鎧…。私たちも魔神に乗り込む
ときの鎧は・・・」
いまのランティスと同じように炎に包まれはしたが、その前に生まれたままの姿に
なっていたことを思い出し不意に光が口ごもった。
中途半端に言葉を切った光をランティスが怪訝そうに見遣る。
「…どうした?光」
「えっ?あ、ううん…、もう魔神を纏うこともないんだなと思って・・・。って
言うか、もう誰にも、纏わせちゃいけないよね」
自分に言い聞かせるようにこくんとひとつ頷いた光を、ランティスはそっと抱き
寄せる。
「それはヒカルが背負うことじゃない。みなでそうしていけばいい……違うか?」
「そうだね。そう決めたんだから」
マント越しでも判る華奢な身体を独り占めしたい衝動に押し切られるまいと、
ランティスは腕の中の光を抱え上げた。
「うきゃあ!いきなりどうしたの!?」
「ここのバルコニーは招喚するには手狭だから、いつも向こうで喚んでいたろう?」
「それは判ってるけど、自分で歩けるったら!!」
サンタの衣装ばりに真っ赤になってわたわたと暴れる光に、ランティスがちいさく
笑った。
「裾を踏んでしまいそうだからな。このほうがいい」
痛いところを衝かれた光が一瞬唸った。
「ううっ…剣道着や着物の裾は踏んだことないのに。今度はハイヒール履いてきて
ばっちり着こなすから…」
それはそれで別種の危険がありそうな気がしなくもないがと思いつつ、暴れる光を
ものともせずランティスは悠然と歩いていくのだった。