a long time ago
「「「こんにちは〜!」」」
今日も元気一杯でセフィーロ城の広間に三人娘が姿を現した。
「よぉ、来たな」
香り高いお茶を味わいながら、フェリオが風にウインクを飛ばす。
「一ヶ月ぶりやなぁ。それでヒカル、ニュウガクシケンはどないやったん?」
三人ともそれぞれ内部進学で高等部には上がれるのだが、光だけは「特進クラスに入らないと
先々困るから」と猛勉強していたのをセフィーロ城の人々もよく知っていた。
えへへっとにっこり笑ってVサインを出した光に、プレセアとカルディナが首を傾げた。
「『に』…?」
「なんやの、それ…。ああ、ジャンケンとかいうんの『チョキ』か??」
二人の反応とそれにカクッとこけそうな光を見て、海と風がくすくす笑った。
「違う違う、『チョキ』と同じ形だけど、これは『Vサイン』って言ってね、『やったよ!』って意味なの」
「地球の、私達とは違う国で使っている英語って言葉なんですけれど、勝利を意味する『victory』の
頭文字から取っているんですわ」
「ようやった、ヒカル!!ん〜っっ!」
今回は逃れられるのかと思ったカルディナの力一杯のハグに、光がばたつくのもお約束だ。
海が広間をきょろきょろ見回していると、プレセアが笑った。
「アスコットなら果樹園よ。二、三日荒天が続いたから、様子見にね」
「もしかして、…台風みたいなひどいお天気だったのか?」
日本も台風ばりの荒天に見舞われ各地に被害が出たばかりで、ある懸念を消せない光が不安げに
尋ねた。
「タイフウっていうのがよく解らないから、なんとも言えないわねぇ。…あ、導師」
光を気遣うようにプレセアが言葉を濁したとき、クレフが広間に顔を出した。
「よく来たな」
そう言いながら三人を見回したクレフの視線が、縫い付けられたように光にくぎづけになる。
「クレフ…?わ、私、顔になんかついてる?」
隣に立っている風に、光が慌てて向き直る。
「いいえ、特に何も…」
光を、というより、まるで光を通して別の何かを見ているような、どこか遠いまなざしだった。
「ねぇ、クレフ。光に何かあるの?いやなヴィジョンでも見えるの!?」
クレフの様子に不安を感じた海が、導師のローブの袖を掴んで揺さぶる。ハッとしたように、クレフが
微苦笑を浮かべた。
「いや。ただ、いつもと違う髪型だったんでな…」
「あ、これ?高等部で出来た友達が編み込みしてくれたんだ。綺麗に出来てるからランティスにも
見せたくて。えへ」
サイドを編み込み結い上げた光は、ほんの少しだけいつもより大人びてみえた。
「ランティスに、か…」
愁いを帯びたクレフのつぶやきに気づかず、光は扉のほうに駆け出していた。
「ランティスは部屋に居るんだよね?私、報告に行ってくる!海ちゃん、ケーキ残しといてね〜!」
「甘〜い!その場にいない人に優先権はないわよ!」
冷たく答えてみせる海を越えて、クレフの視線はまだ光を追っていた。
「……キャロル……」
a long time ago - side LANTIS -
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今回も捏造設定満載です(いまさら言うな?)
この頃の光ちゃんは、まだランティスともイーグルとも「おともだち」状態
でも綺麗に出来てる編み込みを見せたいのがランティスだけなのは
イーグルがまだ「意識の上でしか起きられない状態だから」というのに過ぎない…のかな?
いつもと違う髪型でセフィーロにやってきた光ちゃんを見て
ランティスとクレフが何を思っていたか…というところからお話が始まります