風の愛情物語
勉強の合間、喉を潤したいとキッチンを覗いた風に声がかかった。
「風さん、お茶にしましょう。空さんにもお紅茶運んでくださる? 今、シアター
ルームにいらっしゃるのよ」
「はい。お母様」
姉の空がシアタールームに居るのは珍しいと思いながら、風は邪魔にならないよう
静かにドアを開けた。
もう終わるところだったのだろう、エンドロールと歌が流れていた。
聴くともなく耳に流れ込んだ歌詞に、風は不意に縫い留められてしまう。
『あいたくて、あいたくて、あいたくて、あえないひとに』
手元が震えて、ソーサーとカップが小さくカチャリと音を立てた。その音に無段階
切り替えの部屋の照明を明るくした空が風を振り返る。
「あら、わざわざ持ってきてくださったの? ありがとう風さん」
空の声で呪縛を解かれた風がかたわらのテーブルに紅茶と菓子籠をセットする。
「…随分昔の映画のようですね…」
「そうね。小学校の低学年の頃のだったかしら…。ヒロインの相手役の俳優さんが
亡くなられた時に取り上げられていて、少し懐かしくなって。まさかうちにあるとは
思ってもみませんでしたわ」
このシアタールームに置いてある物の殆どは父のコレクションだ。だからアイドル
女優が主演しているような作品があるとは空にも意外だったのだろう。
「…なんという作品ですか?」
「『早春物語』というのよ」
アイドル主演の映画は妹の好みとは違うように思えるのだが、何か気に掛けている
ような表情にも見えなくもない。
「風さんはここに座って。このお紅茶は風さんがいただいてね」
突然席に押し付けられた風が目をぱちくりさせている。
「空お姉様?」
「せっかくセットしてあるんですもの。風さんもご覧になるとよろしいのですわ」
Playボタンを押してふふっと微笑うと、空はシアタールームを出て行った。
晴天に恵まれた日曜日、澄み渡る…とまではいかないが東京タワーの展望台からは
かなり遠くまで見はるかすことができる。だがそれは二人が望む景色ではなかった…。
「今日もダメか…。最近風ちゃんあんまり来ないよね…」
デボネアの手からセフィーロを救い東京に舞い戻ってからというもの、ふたたび
彼の地に行けはしないかと東京タワーの展望台に三人は何度もやってきていた。
二週に一度が月に一度になり…、ふた月に一度になり…。夏の制服で三人揃って
セフィーロを見て以来、風はあまり東京タワーに来なくなっていた。
「そうね。ま、風には風の思うところがあるんでしょ」
「思うところ…?」
「そういう光はどうなの? もしこの瞬間にセフィーロに招喚されたら、ちゃんと
覚悟は出来てるの?」
「……戦うのは…最終手段だ。なんとか話し合ってみてからだよ」
きゅっとくちびるを噛み締めた光に海が苦笑する。
「誰もそんなきな臭い話してないったら。無口、無表情、無愛想の朴念仁のことよ」
時間切れ未完
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殉@kanzakijyunさま主催によるツイッター恒例企画、
第4回 深夜の真剣レイアース書描き60分1本勝負に参加させていただきました。
2014.9.21AM8:45-9:45の60分(HPへの編集時間を含まない実質執筆時間)で
例によって例のごとく未完です。
今回のお題は 鳳凰寺 風(の愛情物語) です。
タイトルと内容の不一致は書き手の記憶違いに起因するものですが、
あながち間違いでもないかとこのまま行っちゃおうと思ってます。
書き進むうちにまた変わるかもしれません(汗)
一部内容に時間軸の矛盾もあったりしますが、そこはスルーな方向で…。
基本、当サイトでは原作ベースなのですが、これはアニメベースになってます。
さて、置き場所どうしよう…(悩)