◆◇◆SanaSEED
5周年企画◆◇◆
MAGIC KNIGHT RAYEARTH
SPECIAL@Sanaさま
ランティスx光同盟にも参加されている、SanaSEEDさまの5周年企画に
参加させていただきました(≧∇≦)/
レイアースの中からシチュエーションお題5の
1.ランティスのばかああああああ!! を CBS&CRSバージョンでお送りします
ウェディング・ベル vol.1
――光、海、大学四回生の元旦。
今年も目一杯着飾って、二人はセフィーロに年始の挨拶にやってきた。風は去年の六月に
フェリオ王子と結婚したので、今年はセフィーロで出迎える立場だ。
「「明けましておめでとうございま〜す!」」
「明けましておめでとうございます。光さん、海さん、本年もどうぞよろしくお願い致します」
振袖に身を包みながら元気いっぱいで妙にフランクな二人と、着ている服はセフィーロ風なのに、
日本式に深々と頭を下げる風との対比に違和感を覚えているのは、最近やや古い日本文化の
研究に勤しんでいるクレフぐらいのものだろうか。
いつもと違い髪を結い上げている姿の海の色っぽさにアスコットのほうが真っ赤になりつつ、
それでもフェリオにレクチャーされた通りに褒め言葉を忘れないのが健気だった。
「ウミ、今日は一段と素敵だね。ドキドキするぐらい綺麗だよ」
「ありがとう、アスコット」
どちらかと言えば子供っぽいと思われがちなアスコットがこれだけのセリフを捻り出しているというのに、
もっとずっと人生経験を積んでいるはずの魔法剣士の言い草は実にそっけなかった。
「ヒカルのフリソデ、去年のとも一昨年のとも違う気がするが…?」
「毎年買うのはもったいないって言ってるんだけどね。いろいろお付き合いがあるから、売上協力
なんだって。一昨年のは翔兄様、去年のは優兄様、これは覚兄様のお見立てなんだ。どうかな?」
光は両袖の柄がよく見えるようにして、とてとてと一回転してみせる。
「お前の兄たちはみなヒカルに似合う物をよく知っているな。俺は今年のが一番好きだ」
「だと思った。兄様たちの中では一番覚兄様と気が合いそうだもの」 (下二人は妹の彼は誰であれ威嚇するのでわ?・爆)
ランティスはその大きな手で、優しく光の頬に触れる。
「向こうに行けなくてすまない」
「ううん、私こそちゃんと連れて飛べなくて、ごめんなさい」
「謝ることはない。ヒカルはこうして来てくれるのだから」
人前でも光とこれだけ話せるようになったのが、進歩といえば進歩だろうか。ふと気づいたように、
光がキョロキョロと辺りを見回す。
「今日はやけにランティスとスムーズに話せると思ったら、プリメーラが居ないような…?」
「昨日から精霊の森に帰ってる」
「お正月の里帰り?…って、それは地球の習慣か」
「半年ほど修行するとか言ってたな」
光はきょとんとして、結い上げた髪の間からネコミミが飛び出している。
「妖精さんにも修行ってあるの?生まれつき魔法が使えるのかと思ってたよ」
「簡単な治癒魔法は生来のものだが、大技には修行が要るらしい」
「大技?何やるんだろう。魔神にでも化けるとか…」
「…化けてどうするんだ」
海と風は二人の話に聞き耳を立てつつ、「まさか元・柱(光)の抹殺なんてことはないわよね」
「まぁ、そんな…」と、正月早々物騒なことをささやきあう。(魔神は柱の抹殺用兵器だったから)
ただの思いつきにツッコミを入れられた光は、カリカリと頬をかいて苦笑いをしていた。
「うーん、よく判んないけど。まぁ、プリメーラが帰ってからのお楽しみだね♪」
散々いじめられていたようにランティスには(光以外の全員にも)見えたのに、プリメーラの帰りを
待つという光の寛容さ(というより鈍さ?)は真似できないと心底思う。
城の人々とひとしきり歓談したあと、もっと甘やかな二人だけの時間を過ごすために、
恋人たちは広間から姿を消した。
――その年の春
大学を無事四年で卒業したものの、光は就職していなかった。卒業したらすぐにもセフィーロに
いくはずが、優翔連合軍の反対で難航していたためだ。だからと言って家事手伝いの身でもなく、
在学中からアルバイトに通っていた近所の幼稚園で、「婚約者の海外異動が確定するまで(まさか
異世界に嫁ぐともいえず・笑)」という約束で働き続けていた。四月の半ばにようやく優翔連合軍が
白旗を掲げたので、園児たちにも先生たちにも惜しまれながら、四月一杯で幼稚園を寿退職した。
そうでなくとも式の日取りに決めた六月三十日まで日がないのに、中途半端に仕事を放り出せない
性格が自分の首を絞めていた。
五月に入ってからはセフィーロで式の準備に取り掛かった。いくつか選んでおいたウェディングドレスの
写真を海や風、そしてドレスを作ってくれるプレセアに見せて相談した。「ここはもう少しふんわり」とか
「花を飾るのはどうでしょう?」とかアイディアを出しあいながらやるのが楽しくて、それだけに時間が
経つのも早く、ドレスや小物を決めるだけ十日以上は費やしていた。その前にランティスに他の指示を
出しておかなかったのは、どう考えても光の失敗だった。
午前中にドレスの仮縫いを済ませて、一緒にランチをとった後、光はランティスの執務室(兼私室)に来ていた。
「結婚式の招待状?それを、俺が書くのか…?」
「だってクレフが風ちゃんたちの時みたいに出してやろうって言ったのに、ランティスが断っちゃったんでしょ?」
「ああ」
恐ろしく大層で派手なことになりそうなので、確かにきっぱりと断った…。 (もしや墓穴?)
「私、まだちゃんとセフィーロの文字書けないから、ランティスに書いてもらうしかないんだ。二人のことだから、
他人任せなのもどうかと思うし」
「…書式が判らないんだが…」
「原文は練ってきてあるんだ。風ちゃんにセフィーロ語に書き直してもらってくるよ」
大事な時期の妃殿下をあまり煩わせてもいけないので、とりあえずなんとかしてみようとランティスは思った。
「原文を読んでくれないか?そこから意味を拾っていく」
本当のところ、ランティスにはやっぱり結婚式なんて面倒なだけなんじゃないかと密かに危惧していただけに、
その申し出は光の顔をほころばせた。
「いつものお茶会メンバーだし、結構砕けた文体にしてきたんだけど…
『拝啓 緑も深い青葉の頃となりましたが お元気でお過ごしのことと思います』
「『緑も深い青葉の頃となりました』というのは、セフィーロ国内限定になりそうだが?」
「え?あぁ、そっか。チゼータとかは常夏だっけ?日本で原文書いてるときは、違和感無かったんだけど、
国外からのお客様が多いんだもんね。じゃ、それナシ。『突然ではありますが私たち結婚することになりました』」
書くのを微妙に嫌がってた割には、ランティスのチェックは結構細かかった。 (それは一杯書くのが面倒だったから…)
「そんなに、『突然』だったか…?結婚自体はずいぶん前に決めてたろう?」
「んー、まぁ二人の間では決まってたよね。じゃそれも省いていいや。『ご多用中 大変恐縮ではございますが、
ご列席賜りますようお願い申し上げます 敬具』」
「まだ時間と場所を言ってないな」
「そういうのは別紙じゃない?」
「いや、間違いなくそういう物を失くすやつを一人知ってるから、一枚物のほうがいい」
含みありげなランティスの言い方に、光は特定の名前を挙げてみる。
「それって、イーグルのこと…?」
「他にいるか?」
メモ書きしていた言葉を見ながら、ランティスがさらさらと清書していく。
「『拝啓 お元気でお過ごしのことと思います
六月三十日 午前 セフィーロ城に於いて
結婚式を挙げることになりました
ご多用中 大変恐縮ではございますが
ご列席賜りますようお願い申し上げます 敬具』――『拝啓』のあとは、『お健やかにお過しのことと
お慶び申し上げます』に変更。あまり砕け過ぎても、ファーレンのご長老に失礼だからな」
「なるほど。チャンアンさんも来てくれるかな?」
「ファーレンからは遠いから、無理は言えまい。招待状だけは出しておくが」
「ファーレンに三通、チゼータに二通、オートザムに三通、セフィーロは…聖職者役のクレフ以外には
出さなきゃね」
「城内の者にも出すのか?口頭で伝えればいいだろう?」
「ダメだよ、きちんとしなくちゃ。『親しき仲にも礼儀あり』って…、これは日本の諺か。あともう一通書いて
欲しいの。城下町で仲良くなったミラも招待したいから」
「あぁ。よく遊びに来てる、お前に懐いてる子だな。判った」
「見回りやデスクワークでいろいろ忙しいのに無理言ってごめんね。私もカードの模様ぐらいは
やるから。次のライナーに載せたいから、あんまり時間がないんだけど」
執務机の上にある小さなカレンダーを手に取ってランティスが唸った。
「ちょっと待て、ヒカル。次のライナーは明日の正午だろう?それまでに他の仕事の合間を縫って十通
以上書くのか?」
「だってその次のライナーは月末だし…。ドレスの打ち合わせを始める前に、招待状のことランティスに
話しておくつもりだったのに、私がうっかりしてたんだ。ごめんなさいっ!」
光から顔を背け、大きくためいきをついてランティスが呟いた。
「…許さない…」
「ランティス…っ!」
彼の左膝に座ったままの光が、両手で肩にしがみつき、涙を湛えた目で上目遣いにみつめてきたら、
ランティスはもう抗えない。
「じゃあ、これは罰だ」
姿勢を変えて華奢な身体を左腕の中に落とし込むと、ランティスは覆いかぶさるようにして光のくちびるを奪った。
むさぼりつくすような熱いくちづけから開放されると、光は上気した頬を膨らませて呟いた。
「…ランティスのばか…。こんな意地悪なキスはいやだ」
「なら、やり直そう」
光は真っ赤になって、執務机の真正面のドアを指差す。
「あのっ、仕事中なんだから誰か来たら…」
「誰にも来させない」
ランティスは右手をドアのほうに向けて軽く振ると、今度は優しくくちびるを重ねた。長いキスのあと、ふたたび
光がドアを指差した。
「さっき結界張ったでしょ?仕事中はちゃんと解いて!でないと私がからかわれちゃうんだから。『ヒカルが居ると、
時々ランティスの部屋がセフィーロ城から消えてなくなる――』って!」
「誰に?」
「いろんな人に!」
「仕方がない、今日は解くとしよう。――招待状用の書紙は用意してあるのか?」
「私の部屋に置いてある。すぐに取って来るから」
明日の正午までに時間を切られた手間のかかる作業に、後回しに出来るデスクワークを放り出してランティスが
取り掛かる。(さすがに今度は光を膝に乗せたまま、とはいかない) ティーテーブルから椅子を引っ張って来て、
ランティスの大きな執務机の片隅で、光はカードの表面に何やら書き込んでいた。
「それは何の模様だ?何かのまじないか?」
「模様じゃなくて文字だよ。カリグラフィーって、装飾文字なんだ。Wedding Invitation って書いてあるの。
ま、判るのは海ちゃん風ちゃんだけなんだろうけど、『気はこころ』だよ。そっち書けた?」
「まずはファーレンの三通。自分の署名はヒカルが書いてくれ」
ランティスが書いたカードを、光はじいっと見つめている。
「書き損じてはいないはずだが…?」
あまりに光がまじまじと見ているので、怪訝な顔をしてランティスが問う。
「書き損じてても判らないよ、私。ランティスの手蹟(て)が好きだなぁ、って思ってたんだ」
不思議そうに自分の手を見つめるランティスに、光が笑いかける。
「そっちの『手』じゃなくて、手書きで書いた文字のことをさして、『手蹟(て)』っていうんだよ」
「文字より俺のほうを好きでいてほしい」とは、さすがに言い出せなかったランティスだが、珍しく光のほうが
それに気づいた。
「ランティスのことが好きだから、手蹟(て)も好きなのかな。ここに署名したらいいんだよね」
最後に『ランティス』と書かれているのだけは読めたので、その右隣の余白を指さしランティスが頷くのを確認する。
「んー、結婚したら使えなくなるから、最後に使っておこうかなぁ」
光はペンケースから筆ペンを取り出すと、少し姿勢を正してから、しゅるしゅると一気に書き上げる。
「うん!我ながらバッチリ」
どう?とばかりにランティスに見せるが、彼にはただの模様にしか見えなかった。
「いや、そこは名前を書く場所だったんだが…」
一枚書き直しかと眉を曇らせたランティスに、光はニコニコと笑って言った。
「ああ、いつもの字体じゃないもんね。これは私の花押なんだ。書道の作品とかに、入れる署名みたいなもの。
これで『獅堂光』ってちゃんと書いてあるんだよ、模様っぽいけど」
「ヒカルの国の文化も奥が深いな。まだまだ知らないことがたくさんある」
「お互い知らないことはたくさんあるよね、きっと。それはまたあとにして、サクサク書いてかないと、夜は
見回りなんでしょ?」
そこはかとなくかかあ天下の様相を見せつつある二人だった。
途中で持ち込まれる急ぎの書類を片付けつつ、ランティスがすべての招待状と宛名を書き上げたのは、見回りに
出かける間際だった。署名だけならともかく文章まで書いていたので、筆圧が高く筆記具を握る手に力が入りすぎる
(かつて光のお気に入りのサイドノック式シャープペンシルを興味本位で使おうとしてへし折った)きらいがある
ランティスは、これで剣が持てるのかというぐらい右手が強張っていた。
「ね、大丈夫?」
「剣は両手持ちだし、別に左手でもいける。魔法も使えるから問題ない」
封蝋をする前に数を読んでいた光が、「あれ?」という。
「どうした?」
「一通足りなくない?」
光は宛名が読めないので、もう一度ランティスが確認しなおす。
「貸してみろ。ファーレン三通、チゼータ二通、オートザム三通、王子夫妻、プレセア、ラファーガ夫妻、ウミ、
アスコット、ミラ…あってるだろう?」
「プリメーラのは?」
「出すのか?」
「他の人に出しててプリメーラにだけ出さないなんて変じゃないか。修行で来られないかもしれないけど、
出来れば出てほしいし…」
光を恋敵と公言して憚らなかったプリメーラが来るかどうかははなはだ怪しいが、きちんと引き継ぎをやりたがる
ラファーガとの交替まで間がないので、慌ててもう一枚のカードと宛名を書き上げる。
「精霊の森はライナーでは行かないから、導師かアスコットの魔獣に頼んでくれ。じゃあ、行ってくる」
軽く光にくちづけると、ランティスは急いで部屋をあとにした。
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ライナー…セフィーロ、オートザム、チゼータ、ファーレン間に設けられた、書類等の定期便(セフィーロからは15日と30日に発送・笑)自動車部品のシリンダーライナーより
結界…殻円防除の応用で人払いしたり、騒音をさえぎったりしてます(^.^; (2009年10月のSanaSEEDさまでのチャット会後ネタからの発想です)