……ほたてのほさまによる宿題はご覧になりましたか?
(そちらをご覧になってないと、何がなにやら解らないと思いますので…)
ご覧になって来られたお客様は下のほうからどうぞ
ほたてのほさまの提出された宿題に感激して
さらに管理人が暴走した結果が↓で、
そこに恵さまが提出してくださった宿題が
偶然ながら絶妙に絡みます(≧∇≦)
Chu * Chu バリエ
「あ、そうだ!受験勉強で頭が沸いちゃってる時は森林浴でリフレッシュするのがいいって
風ちゃんが教えてくれたから、今日は木のそばでお昼寝しようよ!」
そう言ってニコニコーっと笑うと、返事を待ちもせずにランティスの手を引っ張って光は回れ右を
していた。
『……自分からキスをおねだりなんて大胆なことやらかした後に、ランティスの部屋へなんか
行けないよぉ〜〜っ!』(光ちゃん、ココロの叫び・笑)
光と二人きりであれば場所などどうでもいいランティスは、彼女に並んで肩を抱いて歩きはじめた。
「……あれ、この木にもいるよ……。ここってこんなに栗鼠がいたんだ…」
セフィーロ城の中庭にはいくつかお気に入りの木があるが、『二人でお昼寝用』の木はどれもこれも
先客がいて光が困惑していた。
「クオリスはいまが繁殖期だからな」
≪繁殖期≫の言葉を砕けて翻訳した光が、ポッと頬を赤らめる。
「そ、そうなのか。これからたくさん栗鼠…クオリスが増えるんだ。セフィーロがもっと賑やかになるね!」
成体でも手乗りサイズのクオリスが三倍増しようが五倍増しようが、国の賑わいなどそんなに変わらない
のではないだろうかとの考えが掠めたが、上機嫌の光に水を差すこともない。
『クオリスよりも人間を増やすほうが賑やかになる』・・・と言いかけ、これはある種の過激さを孕んだ
発言になるとランティスは自粛した。(だからむっつりだって言われるんだよっ、ランちゃん)
「…部屋へ戻るか?」
ふるるるっと光は首を横に振った。
「ううん。だってこんなに緑のいい香りがするんだもん。枝はクオリスに譲るけど、ここでお昼寝しよ!」
お誂え向きにその木の根は土の下に綺麗に収まっているので座りやすそうだった。ランティスがばさりと
マントを広げて先に座りこむ。ランティスが確保したスペースに寄り添ってちょこんと座ると、光は学校や
家での出来事を話しはじめていた。
「現住建造物損壊容疑者を中庭で発見・・・。人質をとっている模様。身許の確認急げ…。ターゲット
スコープ・オープン……電影クロスゲージ、明度20!!」(さて、元ネタの解る人いるかな?)
カシャリとシャッターを切る音がしたが、高性能望遠なので、対象には気づかれていない。
「おい、何のごっこ遊びだよ、そりゃ。広間の扉ぶっ壊して逃げたランティスが、ヒカルと仲良く昼寝
してるだけだろが…」
光の誕生祝いに駆け付けるにもオートザムは遠い。NSXが着陸する爆音が聞こえなかったとも
考えにくいが、ランティスが結界を張り巡らせて雑音をシャットアウトしていることは十分有り得ることだ。
この世界の果てに居ようと愛する者の気配を感じ取れる癖に、遠来の客は完璧無視して二人きりの
夢の国にいるだなんて、FTOで蹴っ飛ばしても足りゃしないというものだ。(……他人の恋路を邪魔するヤツは
精獣に蹴られてなんとやら…って、知ってるかい?)
ジィーっとプリントアウトされた写真を見て、黄金色の瞳が微かに見開かれた。
「あれ…、ルージュでもつけてたのかな…」
ほんの僅かにいつもと違う少女のくちびるの色に目ざとく気づく男は、元セフィーロ攻略最高司令官
イーグル・ビジョンその人だった。
「ヒカルは寝顔も可愛いですねぇ。ちょっと余計な人が写り込んでますけど」
ジィーっとさらにプリントアウトしているイーグルをジェオがジロッと横目で見ていた。
「趣味悪ぃぞ、隠し撮りなんて」
「ヒカルには後でお許しを貰いますよ。ランティスは……」
イーグルがフッと底知れぬ笑みを浮かべる。
「『写真をばらまかれたくなかったら、ジェオお手製チョコレートケーキをホールで食べなさい』とでも
からかってみましょうか」
「俺の力作をくだらねぇ遊びのネタにすんなよ…」
スイーツに目がないイーグルや光たちに味わって貰えるならともかく、甘い物の苦手なランティス用なら
人工甘味料を頭からぶちまけてやれば十分だろうと思えた。
「さて、起こしますか」
「気持ちよさそうに寝てんだし、そっとしてやったらどうだ? お嬢ちゃんがジュケンセイだから、最近
あんまり逢えないんだろ、あいつら…」
「そのヒカルの誕生日祝いをやる前にあの人が主役を掻っ攫って逃げちゃったんですから仕方が
ありません。皆さんお待ちなんですし」
ニコリと極上の笑みを見せるその裏に、本当に他に思うところはないのかと、問い詰めたいような
聞いてはならないことのような複雑な気分をジェオは抱え込んでいた。
皆に誕生日を祝って貰い、『志望校にバッチリ合格出来るよう頑張る!』と光は高らかに宣言していた。
帰る間際にイーグルが取り出した写真にきゃあきゃあ騒いでいたものの、隠し撮りを怒るどころか
(ランティスは雷衡撃射を唱える寸前だったが)『これ貰っていい?ランティスの写真って、私、一枚も持ってない
から…』と、光は宝物のようにしっかり胸に抱きしめていた。
からかわれて頬を染める光やランティスの仏頂面を拝んでやろうと、あれこれ考えていたイーグルの
いたずら心はすっとなりを潜めてしまっていた。
「・・・・敵わないな、ヒカルには・・・。無事にあちらへ持ち帰れるといいですね」
「ありがとう!…確かにそれは心配なんだけどね」
「そんな表情(かお)しないで。その時はまたプリントしてあげますから」
「うん!それじゃあまた!」
元気いっぱいに手を振る光は二人に引っ張られるようにして東京へと帰っていった。
光が居なくなってようやくオートザムからの客をもてなした(『あれは≪もてなす≫じゃなくて≪あしらう≫のレベル
ですね』』とイーグルは呆れ返っていたが)ランティスは、広間の扉を壊して逃げたことを散々当てこすられていた。
「ランティスがオートザムに居た頃は苦労したもんなぁ。限度ってモンを越えた破壊魔だし…。お城の
営繕担当のヤツと酒盛りしたら、ランティスのネタだけでボトル二本はいけるかもな」
しみじみそんなことをいうザズをじろりと睨むが、また別の方向から矢が飛んできた。
「カルディナ嬢が激怒してたぞ。『高級品の紗(うすぎぬ)やったのに、ボロ布になってもうたやないの〜!』
……ってな」
最近大阪の…、もとい、チゼータの姫と交流を深めつつあるジェオが微妙なチゼータ風イントネーションを
披露する。
「ラファーガ殿が宥めるのに苦労されてましたね…。気の毒に……」
くすくす笑いでイーグルがそういうと、ゆらりとランティスが立ち上がった。
「おっ、どしたよ?」
「――そろそろ城下の見回りに出る時間だ…」
本来ならラファーガの担当の日だが、まさにそのせいで、「代わりに行って貰おう」と押し付けられたのだ。
(自業自得だよ、ランちゃん…)
「僕らもそろそろおいとましましょうか。ヒカルが来られないからって、浮気はダメですよ、ランティス」
ポンポンと肩を叩きつつそんなことを言う親友を睨みつつ、夜回りの前にある女性(ひと)の部屋を訪ね
なければと、ランティスはちらりと考えていた。
「そろそろ来るかと思ってたわ…」
ランティスを出迎えた女性がニコッっと笑った。
「何故客が来る前に扉を直さない…」
ぼそりと言ったランティスに、その女性は敢然と言い放った。
「導師からのきつ〜いおたっしだったんですもの。『壊した本人にやらせるように』って。――はい、コレ」
ドアの脇の棚に積んでいた数冊の本をランティスにどんと押し付ける。本のタイトルを見たランティスの
顔がわずかに歪んでいた。
「『創師になりたい人が読む本』、『よくわかるシリーズ 修復魔法入門』、『修復魔法 Q&A』、それと
『創師のお仕事 創造 と 修復』……導師からお預かりしてた4冊、確かに渡したわよ。頑張ってね」
バタンと閉ざされたドアの向こう側で、モコナを折檻するときばりの派手なプレセアの高笑いが響き
わたっていた。
――遡ること数時間・・・・
光を連れて逃亡した(笑)ランティスと入れ違いに現れた遠来の客に歓待のお茶を振舞ったあと、
主役の光が不在では話にならないからと、一旦それぞれが捜索に散っていた。
「ホンマにもう…。ウチの紗(うすぎぬ)、ボロボロにして逃げてからに…。ゴメンで済むんやったらケーサツは
いらんけど、あの男ゆうたらゴメンもナシやないの〜っ!とてもタダでは済まさへれへんわ。ファーレン辺りの
最高級品で弁償してもらおやないの・・・・」
部屋でかわりの紗を引っ張り出して羽織った後もカルディナはまだ怒りがさめやらない。
「――新しい紗なら、私が買ってやる」
「ラファーガに贈りもんして貰うんは嬉しいけど、オトシマエはきっちりつけささなアカン。そない思えへん?」
「それも引き受ける。……紗はお前のその肩に触れるものだ。他の男に選ばせたくない。……それにしても
扉を開かぬように細工して、いったい何をしていたのだ…?」
怪訝そうな面持ちで訊ねたラファーガに、カルディナはずいっと歩み寄っていた………。
このあと、恵さまが提出してくださった素敵SSとイラストへと続きます
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クオリス…地球でいうところのリスに似た動物。トヨタ マークIIクオリスより
このときイーグルが撮っていた写真が、『Silent....』で光ちゃんが蒼いパスケースに忍ばせてたやつになっていたりします。
それにしても、「つつみこむ」以来の修復魔法だね、ランちゃん(ラン光サイトと思えない、この扱いの悪さ…)