つつみこむ  〜includingセフィーロ狂想曲〜 vol.3

 

 §セフィーロ狂想曲§

 

 ★元・セフィーロ攻略最高司令官の焦燥★ 1

 

 定例になっていたセフィーロでの勉強会の取り止めで、いつもより早く光はイーグルのお見舞いに

顔を出していた。

 「こんにちは!イーグル、起きてる?調子はどう?」

 『こんにちは、ヒカル。起きてますよ。今日はいつもより早いんですね』

 イーグルが起きているといっても、まだ意識の上だけの話だった。

 「今日はね、風ちゃんの都合で勉強会中止になったんだ。だから自由時間が少し増えたの。いいでしょ?」

 『じゃあ今日はゆっくりおしゃべりできますね。最近ジュケンベンキョウで大変そうで、ちっとも長居して

くれないから僕もつまらなかったんですよ』

 「いや、いまはヒカルを休ませるのが優先だ」

 光と一緒に来ていたランティスが、彼女の肩に軽く手を添えて立ち上がった。

 『お昼寝なら、以前はこの部屋でしてたじゃないですか、三人揃って…』

 「ごめんね、イーグル。ランティスと二人きりでないと、私、まだちゃんと集中出来ないんだ。私がもう少し

慣れたら、三人でも出来るみたいだから、それまで待っててね」

 『昼寝が、ですか?』

 「ううん」

 『じゃ、何が?』

 「お前にもしただろう?本格的に、ではなかったが…。あぁ、あのときはまだ意識が戻ってなかったんだな。

ヒカル、行くぞ」

 「またね、イーグル!」

 遠ざかる二人の気配と、ランティスの残した言葉がイーグルの頭の中でぐるぐると回る。

 『意識のない間の僕に、ランティスがしたこと…?(意識のない間に何をされたかなんて、当然判らない訳で・汗) 

それをいまはヒカルにもしている??二人きりですることで、ヒカルが慣れたら三人でもって…。えーっと、

その、なんで目的語をはっきり言ってってくれなかったんですかーーっ!』

 精神的疲労から怒涛のごとく押し寄せてくる睡魔に、恐らくは生涯で初めてイーグルは必死になって

抗っていた。

 

 

 

 

 

 ★王子と招喚士の困惑★ 1

 

 「おかしい…、道はあってるはずなんだが、やはりこれはそういうことか?」

 その日、愛しの魔法騎士・鳳凰寺 風に頼みごとをされたフェリオ王子は、自分の居城の中で迷子に

なっていた。いつも聡明で論点をはっきり述べる風が、恥じらいながら口ごもりながら話したことを

確かめるために、ランティスの執務室に行こうとしたのだが、さっきから一向にたどり着けないのだ。

いくらセフィーロ城が広くても、限度というものがある。もう一度ふりだしに戻って出直そうと角を曲がった

ところで、大きな帽子を被った招喚士にぶつかった。

 「わぷっ。すまん!なんだ、アスコットか。珍しいところで見るな」

 「ごめんっ!そういう王子も、変なところにいるね」

 三本のクリスタルのタワーからなるセフィーロ城のこの塔で、この上のフロアにあるのは、セフィーロ

唯一の魔法剣士の執務室兼私室だけだった。

 「ちょっとランティスに話があってな」

 「え?王子も…?あの、ひょっとしてフウになんか頼まれたとか?」

 「お前もウミに頼まれたのか?」

 「うん。あんまり一生懸命頼んでくるから、つい引き受けちゃったんだけど、あのランティスが僕らに

教えてくれると思う?」

 「きっぱり思わない!けど、頼まれた以上はなんとかしてやりたいからな」

 フェリオのその言葉に、前髪に隠れたアスコットの瞳がきらきらと輝いた。

 「じゃあ、王子が訊いてくれるの!?そうだよね、王子が訊ねれば、臣下として教えないとは言えない

はずだし」

 「放蕩者の身なんで、あまり偉そうには言えないんだがな、俺は…」

 「そういや、ランティスは部屋にいないの?いま帰ってきたんだよね、王子」

 「いや、そうじゃなくて、あいつの部屋に行けないんだ、さっきから」

 「ラファーガがよく怒ってる、アレかな…。ああ、なんか頭上がいやに重いと思ってたら、ランティスが

結界張ってるみたいだ」

 「やっぱりそうか。これ、破れないか、アスコット?」

 「え゛え゛え゛ーっ!?無茶言わないでよ。結界破れるのは、同等かそれ以上の術者だけだ。僕なんか、

百人いたってランティスに敵わないよ。だいたい、あのザガートに匹敵する魔力の持ち主なんだよ?

ザガートのいない今、導師のすぐ次がランティスなんだからっ!」

 すぐには手出しが出来ないと悟ると、フェリオはふうっとため息をついた。

 「きっとヒカルと一緒にいるんだろうな。結界張ってまで、何やってんだあいつ?」

 「『身体がふわふわするぐらい気持ちいい』コトで、『心も身体もリラックスできる』コトだって…」

 何を想像しているのか、アスコットは真っ赤になりつつ口ごもってしまった。

 「ヒカルが帰るまでは絶対解かないよな、これ。ここで待ってても仕方ない、出直そう」

 「う、うん」

 そうして結界突破を断念して、王子と招喚士は愛する魔法騎士たちのもとへと状況報告に戻っていった。

 

 

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