7月 1日               

 

 

 机などがジェオの指示で蔵書庫に運び込まれるなり、、ランティスは膨大な本の書き起こし作業に取り掛かっていた。

掠れた魔法書記に集中するのに疲れてふと時計に目をやると、すでに日付が変わっている。コールも無しにドアが開いたかと

思うと、ジェオがずかずかと入ってきた。

 「おーい、お前のギアに呼び出し来てるだろうが…って、やっぱり外してたのか」

 「使わないときは邪魔なんだ。イーグルか?なら、まだ進展はないと言っておいてくれ」

 「他に誰だと思ってんだ。コードXX−BB(ダブルエックス−トゥービー)の司令官専用回線使ってるらしいから、お前の生体

認証がなきゃ出られねぇよ」

 「『コードXX−BB』?」

 「『第三者の同席を認めず。記録媒体への記載の原則禁止』だ。じゃな」

 言うだけ言ってジェオが退室したのを見送り、仕方なさそうにランティスがギアを装着する。自動的に生体認証が行われた後、

イーグルのホログラムが浮かび上がった。

 「疲れた顔してますね、ランティス」

 「ジェオまで同席不可とは穏やかじゃないな。何かあったのか?」

 「いや、ジェオは構わなかったんですが、この回線が一番盗聴の可能性が低いので…」

 眉間をぐっと押さえるようなしぐさで、眼の疲れをほぐしながらランティスが告げた。

 「使い物になるのかどうか、今の時点ではまだ見当もつかん」

 「そちらへ着いてからでもまだ十時間と経ってないでしょう?それで進展があるぐらいのことなら、なにもあなた達の新婚旅行の

邪魔しませんよ」

 「ヒカルはどうしてる?」

 「疲れてたんでしょうね。夕食の為にレディ=エミーナが起こした以外はずっと眠ってます。でも熱は下がってるようですよ」

 「なら、いい」

 ランティスの心底ホッとしたような呟きを耳にして、イーグルがくすくす笑いながらからかった。

 「僕なんかより、ヒカルの顔が見たいって感じですね」

 「当たり前だ」

 「ヒカルが起きていれば会わせてあげられたんですけど。寝顔でよければ、いまからでも送りますよ。オアズケのあなたを

差し置いて、僕が見るのもどうかと思って自粛してるんですが」

 「…そのまま自粛でいい。イーグル…お前、酔ってないか?」

 微妙に違う雰囲気を感じ取ったランティスが、少し眉根を寄せた。

 「すみません。ウワバミのレディ=エミーナにちょっと付き合わされました。そういえばヒカル、食後にインフルエンザの薬を

飲んだんですけど、レディ=エミーナに叱られて目を白黒させてましたよ」

 ふと嫌な予感のしたランティスだが、黙ったままイーグルが続けるのを待っている。

 「『赤ちゃんがいるのに薬なんて飲んじゃダメでしょ!?』って…」

 予感的中にランティスは頭を抱え込んだ。

 「どうしてレディ=エミーナの誤解を解いておかなかったんだ…」

 「解く機会がなかったんです。でもおかげで理由が聞けましたよ。結婚を決めてから式までがやけに短かった訳が…」

 

 

 ――少し時間を遡ったレディ=エミーナの別邸

 一時間半ほど仮眠を取ったところで、光は夕食の為に一旦起こされた。比較的寝起きは良い性質だが、挙式の疲れと薬による

眠気で幾分ぼぅっとしている。それでも身体のだるさはずいぶん取れてきていたから、回復傾向にあるように思えた。

 「ごちそうさまでした」

 「オートザムの食事はお口に合ったかしら?」

 レディ=エミーナのにこやかな問いかけに、光が頷いた。

 「とっても美味しかったです。セフィーロよりちょっと地球の料理に近いかも」

 「だったらヒカルの手料理が食べてみたいですね」

 イーグルの言葉に、とんでもないという感じで光はぶんぶん首を横に振った。

 「だめだよ。エミーナの美味しいご飯食べてるイーグルにごちそうできるような腕前じゃないんだからっ。母様にも『こんな状態で

嫁に出してもいいのかしら』なんて言われてたし、ホントはランティスに食べてもらうのも申し訳ないぐらいなんだ」

 「じゃあ、もう少し慣れたら是非」

 密かにランティスを実験台(超失礼・笑)にしておこうとしているイーグルだった。

 「あの、お水頂いてもいいですか?」

 「いいわよ」

 水をもらってカプセルを飲んだ光にレディ=エミーナが不審気に尋ねた。

 「あら、それは何?」

 「インフルエンザ…って、えーっと、インタークーラーみたいなものなんですけど、それの薬です」

 レディ=エミーナは驚いたように、光を叱りつけた。

 「ヒカル、すぐに吐き出して!赤ちゃんがいるのに薬なんて飲んじゃダメでしょ!?」

 「えええっ!?あ、赤ちゃん?!わ、わ、私に?」

 丁度口にしていたお茶にむせて咳き込みながら、イーグルが言った。

 「ゴホッ…、母さん、それ、ゴホッゴホッ、勘違いでしたから。ゴホッ」

 レディ=エミーナの発言に驚きながらも、むせ返っているイーグルの背中を光はさすってやった。

 「だ、大丈夫か?イーグル。でもどこからそんな勘違い…」

 「あら、残念。ランティスに逢ったら、懇々と父親としての心構えを説いてあげようと思ってたのに…」

 「招待状をもらってから式までの期間が、王子達の時に較べてずいぶん短かったでしょう?だからひょっとしたらって…ゴホッ」

 「そ、それは…。六月が今日でおしまいだったから」

 「ロクガツ?」

 聞きなれない言葉を訊き返すレディ=エミーナに、はっとしたように光は一から説明を始めた。

 「えーっと、確か一年って単位は同じだったよね?地球ではその一年を十二の月に分けてて、六番目の月を私の国では六月って

呼んでるんです」

 「ヒカルは八番目の月の八番目の日に生まれたんですよね」

 「そうだよ。それで、六月っていうのは地球の、私の国とは違う国の言葉だとジューンって言うんだ」

 「あれ、それはオートザムと同じですね。そういえばヒカルの国ではマホウキシなのにエイゴではマジックナイトと読む…と

言ってたようなものですか?」

 「うん、それと同じ!じゃあ、ジューン=ブライドって言葉はある?」

 「『六月の花嫁』…?それがどうかしましたか?母さん、何か思い当たります?」

 「さぁ、なにかあったかしら…」

 創造主が同じでも、そこまで各界共通ではなかったらしい。気を取り直し、光はふたたび順序だてて話を続けた。

 「地球の古い神話だと、六月は結婚を司る女神様の月なんだ。だから六月に結婚した花嫁は幸せになれるって言われてて、

子供の頃からちょっと憧れてたんだ」 

 「まぁ、ロマンティックねぇ」

 「兄様達のお許しがもっと遅ければ諦めてたと思う。でも何とかギリギリ間に合うかなって思って、この時季ランティスが忙しいの

判ってるのに、無理言っちゃった…」

 「…ランティスには、それ、話してませんよね?どうして言わなかったんです?」

 責めるふうではなくやさしく訊ねるイーグルに、光は目を伏せて答えた。

 「言おうかな、とは思ったよ。きっとランティスは微笑って聞いてくれたと思う。でも、ふと考えちゃったんだ。それが当たり前の

世界で生きてきた人なら、別にたいしたことじゃないと思う。だけどそんな話を聞いたこともないランティスにとっては、私が言い伝えに

縋ってるみたいで失礼なんじゃないかなって…」

 「ヒカル…」

 「私はランティスが大好きで、ランティスは私のこと、すごくすごく大切に思ってくれてる。ホントはジューン=ブライドじゃなくたって、

ううん、結婚式なんてしなくたって、ただ二人でいられるだけで幸せになれると思う。でも風ちゃんがジューン=ブライドになって、

とても幸せそうにしてるし、やっぱり憧れてた分、ちょっと羨ましかったんだ。それに…」

 イーグルとレディ=エミーナは黙って光が言葉を続けるのを待っている。

 「私のこと、好きでいてくれるのはちゃんと判ってた。でもランティスは、ただの一度も『一緒に暮らそう』とは言ってくれなかったんだ。

私が家族と別れてセフィーロに来るしかないから、負担にならないようにって思ってくれてたのかもしれないけど…」

 「それは――。いえ、ランティスらしいですね」

 ただそれだけではないことをイーグルは知っているが、第三者の自分の口から話すようなことではないと沈黙を守ることにした。

視線を伏せたままの光は、そんなイーグルの表情には気づかない。

 「そう、だね。だけど私のほうから、『セフィーロで、ランティスと一緒に生きていくって決めたから』って言ったとき、『お前の家族が

出られなくても、きちんと結婚式を挙げよう』って言ってくれたんだ。風ちゃん達はフェリオが王族だから式を挙げるのも当たり前だった

けど、そういうことに関心なさそうなランティスがそんなふうに言ってくれたのが嬉しかった。やっと兄様達のお許しが出たから、ちょっと

舞い上がってて、ついジューン=ブライドにもなれるかなって。でも結局、訳は言いそびれちゃった…」

 レディ=エミーナは光の肩を抱き寄せて、髪を優しくなでた。

 「だって、すぐには家族の声を聞くことも出来ないような、遠い世界へお嫁に来たんでしょう?何に縋ったっていいじゃない。他の

誰よりもランティスといることを、ヒカルが望んだことに変わりはないんだから。でもね、ヒカル…、あなたはもっとちゃんと話さなくちゃ

いけないわ」

 「エミーナ…」

 「出逢ってからは九年ぐらいになるのかしら…?でも普通の恋人達以上に、あなた達の住んでいた世界はかけ離れているでしょう?

これからもたくさんの違いを乗り越えなきゃいけないんだから、一人で考え込む前に話してみなきゃ。ランティスはあの通り口数が

少ないから、その分、ヒカルが、ね」

 「それでもヒカルと出逢ってからは、ずいぶん口数が増えたと思いますよ、ランティス。以前と較べれば格段に表情も豊かになったし、

今朝なんかも、なかなか…」

 なにやらくつくつと思い出し笑いをしているイーグルに、レディ=エミーナが眉をひそめた。

 「真面目な話をしてる時になんなのこのバカ息子は、やぁね。一人で笑ってないで、何があったのかお言いなさいな」

 「いえ、ランティスの名誉のためにも、僕の口からは言えません」

 「イーグルってば…、あんまりランティスからかっちゃだめだよ?」

 「まったく、性格悪いのを友達に持ったわね、ランティスも…」

 「酷いな。二人そろってランティスの肩を持つんですか?ヒカルはともかく、母さんぐらい僕の味方してくれてもいいんじゃないかと」

 苦笑いのイーグルに、レディ=エミーナはピシャリと言い放つ。

 「断ります。ヒカル、あのバカ息子をランティスとのトレードに出すから、一緒にうちの子になってくれる?あなたが居ると、娘が

出来たようで嬉しいわ」

 「エ、エミーナ、そこまで言っちゃイーグルが可哀想ですよ。ご迷惑でなければ、私、また遊びにきますから」

 慌てたように身体を離し、改まってそう言う光の両肩に、レディ=エミーナは手を添えて微笑んだ。

 「迷惑なんかじゃないわ。向こうのお母様を頼れない時には、私のことも思い出して。国は違っても異世界よりは近いんだから。

いいわね?」

 「はい、ありがとうございます――ふぇ……っっ、くしゅんっ!」

 光の可愛らしくも派手なくしゃみに、イーグルが心配そうに問いかける。

 「せっかく少し良くなってきたのに、ぶり返しちゃ大変です。まだ早い時間ですけど、そろそろ休んだほうがいいんじゃないですか?」

 「そのほうがいいわね」

 「それじゃ、お先におやすみなさい」

 部屋を出た光の気配が遠ざかると、イーグルは静かに言った。

 「ありがとう、母さん」

 「何が?」

 「――いろいろと、ヒカルにアドバイスしてくれて」

 レディ=エミーナは小さくためいきをつくと肩をすくめた。

 「ランティス取扱説明書のこと?だって、イーグル取扱説明書が必要な人を、あなたが連れてこないから。あなただってそろそろ

結婚してもいい年なのに、ヒカルみたいな可愛い人はいないの?」

 その一言に、イーグルは窓の外へと視線をはずした。

 「…ヒカルは二人もいませんから」

 「あらやだ、ホントにバカ息子なんだから…。親友の故郷に攻め入った上に、その恋人に片思い?」

 「片思いってほどじゃありませんでしたけど。――ま、確かにバカですね」

 「仕方がないわね」

 レディ=エミーナは部屋の隅のワインセラーから秘蔵の一本を出して、グラスを二つ用意した。

 「バカ息子失恋の自棄酒に、とことんまで付き合ってあげるわ」

 自分以上に乱れないウワバミのレディ=エミーナの言葉に、内心ひきつるイーグルだった。

 

 

 ――レディ=エミーナの別邸・イーグルの部屋

 「ジューン=ブライドか…」

 光が結婚式を急いだ訳を聞いたホログラムのランティスが、ふっと微笑む。

 「おや、微笑いましたね。大人の余裕、ですか?ランティス」

 「余裕?違うな。ヒカルが幸せになれるんなら、何だって利用する。言い伝えでも、まじないでも」

 「はいはい。特別回線で惚気るのはやめてくださいね、じゃあまた」

 微妙に失恋した上にあてつけられてはたまらないとばかりに、軽く酔っ払いなイーグルはランティスの返事も待たずに

さっさと回線を切ってしまった。

 「あの様子なら、あなたが心配するようなことはやらかさないと思いますよ、ジェオ」

 作業に取り掛かる前にランティスが話していたことを緊急暗号通信で知らせてきたその場にいない副司令官に、安堵したように

椅子の背もたれに身を預けたイーグルが微笑んで答えた。

 

 

 

 ――その日の午後・レディ=エミーナの別邸

 ここのところ休みらしい休みもなく働きづめで、副司令官のジェオから、「いい加減にしねぇとまた寝たきりになるぞ」と脅された

イーグルはランティス達のオートザム滞在に合わせて一週間の休暇を取っていた。それでも多少は持ち込まれてくる雑事を

書斎で片付けていると、二日酔いの頭に響くノックの音がした。

 「イーグル、ちょっといいかな?」

 ひょこっとドアから覗く光を見ると、イーグルは頭痛に耐えてニコリと笑った。

 「いいですよ。オーリスのパイ作りは終わったんですか?」

 「オーブンに入れたから、焼き上がり待ちなんだ。出来たらお茶にしましょうって、エミーナが言ってたよ。いつもいろんなお菓子

焼いてくる海ちゃんを、つくづく尊敬しちゃう。エミーナが教えてくれてるから今日はなんとか出来たけど、一人じゃ無理かも…」

 「パイ作りは難易度が高いって、ジェオも言ってましたから、簡単な物からやればいいんじゃありませんか。ランティスはお菓子の

味見の役に立ちませんけど」

 「あははは。そうだね」

 光はイーグルの執務机のところまでやってきて、サークレットからミニDVのカセットを取り出した。

 「これ、見られるかな?」

 イーグルはそれを受け取り、検分して首を横に振った。

 「地球の規格ですね。ここではさすがに無理です。MAZDAでならなんとかなるかもしれないんですが、あってもジェオの個人所有の

機器になると思うんで、いくら僕でも勝手には出来ません」

 「ジェオはランティスとノマドだもんね…。無理か」

 落胆している光に、右腕のギアをかざしてイーグルが救いの手を差し延べる。

 「ジェオに聞いてみましょうか?」

 「でもあっちにはランティスもいるし…」

 「穏やかじゃないですね。ランティスには知られたくないものなんですか?」

 「うーん、映ってるのはランティスなんだけどね」

 いったい何が映っているのか興味を持ったイーグルは、ランティスに知られないようさくさくとジェオの許可をとりつけた。

 「ジェオのお許しを貰いましたよ。今日はもう少し片付けておきたいものがあるので、明日、MAZDAへ行きましょう」

 「ありがとう、イーグル」

 

 

 一時間ほど仕事を片付けたイーグルがリビングに下りると、焼きたてのアップルパイの甘い香りが部屋中に漂っていた。

 「いい感じに焼けてそうじゃないですか」

 「うん、先生がいいからね」

 「さぁ、お茶も入ったわよ」

 ランティスを実験台にするはずが、自分が先に食べる羽目になったイーグルはアップルパイをじっと観察していた。鋭くその雰囲気を

感じ取ったレディ=エミーナが自分の息子をからかった。

 「なぁに、そんなに真剣に観察して。失礼な子ね」

 「やだなぁ…。エミーナのと比べられたらもう見た目で失格なのに」

 昨夜のデザートのプチケーキもレディ=エミーナの手作りと聞かされていた光が、予防線を張っている。サクリと軽やかな音を立てて、

レディ=エミーナが焼きたてのパイを綺麗に切り分けた。自分の前に差し出されたオーリスのパイを、イーグルは覚悟を決めて(笑)

口に運んだ。そんなイーグルを光はまばたきひとつせずに、じっと見つめている。

 「あれ、いつも母さんが作るのより、ずいぶん甘さが控えめですね」

 「だって、ランティスは甘いの苦手だし…」

 「それならいっそミートパイを教えてもらったほうが良かったのでは?」

 「いまシーズンだからオーリスがたくさんあるのよ。それにヒカルがオーリス好きだって言うから…」

 レディ=エミーナの言葉に、それは初耳というようにイーグルが目を見開いた。

 「そうだったんですか」

 「この前イーグルがクレフ宛に送ったのをちょっと分けてもらったんだ。そしたらね、地球の果物によく似てたから、なんだか面白くって」

 「つくづく僕らの世界の創造主≪モコナ≫は手抜きが多いですね」

 「あははは。おかげで私や風ちゃんはあんまり困らずに済んでるとも言えるかな?」

 「なるほど。初めてにしてはいい出来なんじゃないですか。ランティスにはまだ甘いかもしれませんが、子供でも出来たらそんな

我が侭ばかり通りませんしね」

 「我が侭なんて言っちゃ可哀想だよ。好き嫌いってあると思うし…」

 「ダメですよ、ヒカル。最初が肝心です。あんまり甘やかしてると、のちのちつけあがりますから」

 イーグルの言葉に、光が目をぱちくりさせる。

 「甘やかしてる?私が、ランティスを?それって、逆じゃないのかなぁ?」

 「いいえ、僕がセフィーロで療養し始めた頃からに限っても、相当ランティスには甘かったですよ、ヒカルは」

 「そうだっけ…?」

 まったく思い当たることがないという風に、光は首をかしげている。

 「じゃあ、ランティスにお茶を淹れてもらったときのこと、覚えてますか?」

 「思い出しただけで口の中が苦くなっちゃう。…あの味は、忘れられないよ。クレフの薬湯って、冷めると苦味が増すらしいんだけどね、

その冷めたヤツ飲んで、『ああ、冷めた薬湯と同じぐらい苦かったんだ』って、おととい再認識したから」

 「そんな不味いもの飲まされても、ランティスを庇ってたじゃありませんか」

 「ああ、そのこと?だって、ホントに五歳じゃお茶なんて淹れられなかったと思うし…」

 「それはそうなんでしょうけど、そのあとに自分がやったこと覚えてますか?ヒカル」

 「私、何かしたかな…?」

 どさくさ紛れに光の手を取って、イーグルが実演してみせる。

 「『ランティスはなんにも悪くない。ね?』って…。十四歳の女の子が年上の男に言うセリフじゃないと思いますよ?」

 黙って話を聞いていたレディ=エミーナがくすくすと笑い出す。

 「ヒカルにかかると、あのランティスも子供扱いね」

 「そ、そんなつもりじゃなかったんだけど…。私ってすごく失礼なことしてたんだ。でもどうしてずっと目をつぶってたはずのイーグルが、

私がランティスの手を取ったことまで知ってるの?!」

 狼狽しているわりには、光はなかなか鋭いツッコミをいれた。

 「あとで当のランティスに聞いたんです。『どうしてたった十四歳の子供なのに、あんな大人びた顔をしてそんなことを言うんだろう?』って、

かなり戸惑ってましたからね」

 「い、いまさらそんなこと聞かされても…」

 光は照れくささのあまり、両手で顔を覆ってしまった。

 

 

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  当サイト限定事項

コードXX−BB(ダブルエックス-トゥービー)…元ネタは 橘水樹・櫻林子両氏の JANE に出てきた、コードXX−2B(読みは同じ)

                            使い方も似たようなもんでした(汗) XXはトヨタ セリカXX(ダブルエックス)から(海外に輸出するにあたって、

                            ヤバイ言葉になるからと、のちにスープラになりました)

                            2Bだと車に繋がらなかったので、トヨタbBからのもじりでBBとしちゃいました

オートザム製のギア(イーグルたちが腕に装着してる機器)…かなり使い道が公式と違うかと思われます(^.^;

MAZDA(etropolis of Autozam Defense Agency)…首都艦隊基地および首都地上軍基地等を合わせた首都防衛機関のこと。カーディーラーAUTOZAMの略称がAZ

                                  なので、それを流用してみたり…(文法は突っ込まない方向で・笑) 

                                           

 

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