6月30日 vol.1              

 

 

  ――ランティスと光の結婚式当日の朝。

 外は相変わらずのいつ止むともしれない雨模様。三国からの招待客の第一陣、オートザムのNSXが降下しはじめた

城近くの草原を見つめながら、クリスタル細工のようなセフィーロ城の入り口に佇む海がぶつぶつ言っている。

 「うーん、梅雨時だから仕方ないんだけど、雨止まないわねぇ…。セフィーロじゃてるてる坊主って効かないのかしら」

 部屋の窓際に吊るしてあった謎の白い人形のことを光がそんな風に呼んでいたなと思いながら、ランティスがちらりと

隣に立つ海を見る。

 「てるてる坊主…と言ったか?あれには別段魔力を感じなかったが」

 傍に立っているからといってまさか返事が来るとは思っていなかった海が、驚いたようにランティスを見上げた。

 「光の部屋で見たの?なんていうか、気持ちの問題ね。第一、あんなものにかける魔法なんて知らないわよ、私達。

で、なんで挙式当日の花婿がこんなところでボサッとしてる訳?オートザムの人達のお出迎えだったら、とりあえず私が

いるからいいでしょ?」

 ボサッとしてると言われて少しムッとしたような表情を浮かべたものの、ランティスは素直に答えた。   

 「イーグルに用がある」

 「え?あなたもなの??」

 いったいイーグルに何の用があるのかと思いながらも、ランティスがひとつの提案をした。

 「こちらの話が済んだら、お前のところへ連れて行く。それでいいか?」

 「そう…ね。こっちもぼーっと待ってるほど暇じゃないし。式のことで彼に頼みたいことがあるの。段取りもあるから

早目にお願いできる?控え室のほうにいるから」

 「判った」

 短く答え、降り止まぬ雨に濡れるのを気にする風もなく着陸したNSXへと歩き出したランティスの後姿に、海が

声をかけた。

 「あ、あのっ、ちょっと待って!」

 立ち止まったランティスは、視線だけを海に送る。思わず呼び止めてみたものの、まだ考えがまとまらず、言葉を

区切りながら海が続けた。

 「あの子――光は…なんでも自分一人で背負い込んじゃうの。いつも、『私は大丈夫!』って言うけど、ホントは

ちっとも大丈夫じゃなくって…。あー、私ったら何を言いたいんだったかしら」

 彼女が混乱している間に、ランティスは静かに海のほうへと向き直っていた。

 「とにかく!!…光のこと泣かせたりしたら、私や風が承知しないから!」

 キッと見据えるような鋭い視線を真っ直ぐに受け止め、海が見間違いかと思うほど微かな笑みを浮かべてランティスが呟く。

 「ヒカルは…いい友に恵まれたな」

 海の返事を待つこともなく、マントを翻してランティスはNSXへと向かった。

 

 

 NSXの昇降口へと辿りついたランティスを、いつも以上にニコニコしながらイーグルが出迎えた。

 「だめですよ、ランティス」

 ずぶ濡れになった髪の雫を振り払いながら、ランティスが訊き返す。

 「…何がだ…?」

 「さっき話していた青い髪のお嬢さんは魔法騎士のウミでしょう?ああ、誤魔化そうったってそうはいきません。戦いのときの

生体データが残ってますから」

 「…だからなんだ?」

 「結婚式当日の朝から、花嫁のお友達と浮気だなんて、だめだって言ってるんですよ」

 明らかにからかっている口調のイーグルをランティスが睨みつけた。

 「…そういう冗談に付き合う時間はないんだが」

 ふうっと息をつき、イーグルも真顔になる。

 「――あなたの部屋で話しましょう。お茶ぐらい、出ますよね?」

 「俺の淹れ方は気に入らないと言わなかったか?」

 にっこり笑ったイーグルが、バッサリと切り捨てた。

 「何をどうしたらあんなに不味くなるのか不思議なぐらいの味してましたっけ。僕が淹れますよ」

 ジェオとともにイーグルに続こうとしたザズに、振り返ったイーグルが丁寧な口調で命令を下した。

 「式の後のヒカル達の新婚旅行はこのNSXでの移動になります。万が一の無いよう、ザズは挙式が始まるまでに最終点検を

済ませておいてください」

 「えーっ!?…了解しました」

 少し残念そうにザズはNSXの中へと戻っていく。その後姿に、ジェオが小さく呟いた。

 「ポーカーフェイス出来ねぇからな、あいつは…」

 

 

 殺風景なまでに調度類の少ないランティスの部屋。それでも光の、「二人でゆっくりお茶する場所が欲しいな」というリクエストもあり、

彼女の見立てで椅子が二脚とそれとセットのテーブル、そして茶器をしまう棚だけは増えた。小ぶりな椅子を嫌ったジェオは遠慮なく

ランティスのベッドに座り込み、イーグルは物珍しそうに茶器の棚を眺めている。

 「お茶ひとつまともに淹れられないわりに、いろいろ変わった茶器がありますね」

 「全部ヒカルが向こうから持ち込んだものだ」

 「ヒカルと言えば…。いつ頃なんです?」

 チェストを開けて何やら探しているランティスは、振り向きもせず問い返す。

 「何がだ?誕生日は八月八日だ」

 「ヒカルの誕生日なら知ってますよ。僕が訊いてるのは…えーと、その、予定日です」

 イーグルにしては微妙に歯切れの悪い言い方をしている。

 「目を開けたまま寝言を言うのか、お前は。結婚式は今日これからだ。その為に来たんだろう?」

 チェストから取り出したタオルを腕にかけたランティスが、呆れたようにイーグルを振り返る。

 「おや、黙秘の構えですか?だけどそれならそうとちゃんと言っておいてもらわないと、こちらも相応の対応が出来ません。

一番大事にしなきゃいけない時期なんでしょう?…三ヶ月ぐらい、ですか?」

 「?…さっきからお前が何の話をしてのるか、さっぱり見えないんだが…」

 「まぁ、あなたが照れるのも判りますけどね。おめでたい話なんだから、そんなにいつまでもとぼけなくたっていいじゃない

ですか。ヒカルに赤ちゃんが出来たんでしょう?その子供がいつ生まれるのかって訊いてるんです!」

 いい加減まどろっこしくなって正面切って訊ねたイーグルに、呆然としたランティスが訊き返す。

 「ヒカルに子供……?出来たのか…?」

 「ああもう、どうしてそんなこと僕に訊くんですか!?僕が、あなたに、訊いてるんです!!」

 「…それ、イーグルが知ってるほうが怖いだろ…」

 苦笑いをかみ殺しているジェオの呟きは、ランティスには届かなかったらしい。

 「そんな話は聞いてない…。それに地球で貰ってきた薬を飲んでいるし、それはない…はずだが」

 めずらしく混乱してしどろもどろなランティスの言葉に、あっさりイーグルが引き下がる。

 「なんだ、違ったんですか。招待状もらってから式までの期間がやけに短いから、『もしかすると急ぐ理由があるんじゃ

ないか』って、レディ=エミーナが言うものだから、てっきり…。一応、身に覚えはあったんですね」

 イーグルのとどめの一撃に動揺しつつも、ランティスがやっとの思いで一言返す。

 「…期間が短い?」

 「王子達のときは半年ほど前に打診されてましたからね。招待状が届いてからふた月足らずで式なんて、何か事情があると

思われても、まぁ致し方ないかと」

 「ヒカルが家族から結婚の許しを得たのがふた月ぐらい前だ。この時季にこだわった理由は…判らん」

 「『判らん』って…。ランティス、ヒカルとちゃんとコミュニケーション取れてます?」

 呆れたようなイーグルの言葉をランティスは黙殺した。生体用シールドを張って一滴も濡れなかったイーグルやジェオと違い、

全身ずぶ濡れだったランティスは思い出したようにマントを外すと、わさわさと大きなタオルで無造作に髪の水気をとりはじめる。

 「ランティス…子供じゃないんですから、言われなくてもちゃんと着替えてください」

 ジロリとひと睨みしたものの、イーグルが怯む訳がない。着替えを手にして別室に向かう前にランティスは導師クレフから

託されたオートザム宛の書簡をイーグルに手渡した。

 「大統領宛の書簡ですが、この件に関しての全権を委任されてるので、僕が開封させてもらいます」 

 腕のギアをランティスのほうにかざすと、大統領令代執行者に託される紋章が宙に浮かび上がる。

 先日のクレフとランティスの話し合いに基づくオートザムの希望も鑑みたセフィーロ側の出方と、それに対する協力要請が

記された書簡に一通り目を通すと、副司令官のジェオにも確認を促す。

 「導師だけじゃなく、あなたの知り合いでもあったんですね。ホントにあなたいくつなんです?ていうか、ヒカルといったい

いくつ違うんです??」

 そんな質問にランティスが返事を寄越すはずもなく。着替えを済ませて出てくるとイーグルに訊ねた。

 「NSXで首都についた後、お前のホバーを借りられるか?なるべく魔法を使うなと言われている」

 「…セフィーロとオートザムの間を精獣で渡れるようなあなたに、『魔法を使うな』ですか…。帰国後ちょうどザズがノマド基地に

出向く予定があるので、一緒に巡航艦ウイングロードに乗艦できるよう手配します。NSXほど目立たないし、ホバーより遥かに

早く着けます」

 「すまない」

 先程から窓の外を眺めたままのランティスに、イーグルが尋ねる。

 「…ヒカルを首都に残すのは何故です?」

 「いま薬を飲んでると言っただろう?地球でインフルエンザとかいう病気に罹ってきている…感染性があるようだから、病人の

ところには連れて行けない。それにこの時期では首都より遥か北のノマドはかなり寒いはずだ。結婚指輪を創師に創ってもらう

ときにかなり無理をしたせいで、昨日の式の打ち合わせも取りやめさせたぐらい体調が良くない」

 「命の危険は…?」

 常になく言葉数の多いランティスの心のうちを見抜けないイーグルではなく、その問いに答えがないことこそが答えだった。

 「…あるんですね」

 いつかも同じやりとりをしたことを思い出しながら、イーグルが強い口調で問い詰める。

 「あの時――セフィーロの『柱への道』を破壊する為にオートザムを離れるあなたを、僕は止めなかった。僕が止めて思いとどまる

ようなあなたじゃないことは判っていたし、その前に僕が柱になるつもりでいましたから。導師がいまセフィーロを離れられない事情は

理解しましたし、オートザムとしてもそれはそれでありがたいことだと思います。だけどどうして、どうしてあなたなんです?もうあの頃

とは違う。いまのあなたには、ヒカルという守るべき者があるっていうのに!」

 「他にいないからだ」

 「いないって、一人ぐらい誰かいるでしょう!?」

 イーグルに向き直ったランティスが静かに訊く。

 「では訊くが、お前がセフィーロで療養していた間、何人魔導師を見た?」

 「それは…」

 「セフィーロの人間はみんな魔法使いかと思ってたんだが、違うのか?」

 それまで黙ってランティスとイーグルのやりとりを聞いていたジェオが口を挟む。

 「違う。魔族や妖精じゃないんだ…」

 「真に心の強いものでなければ魔法は使えない…。これまで柱に頼り切っていたセフィーロでは、心強くある必要もなかったん

でしょうね。一握りの人達を除いては…」

 ある者はただ柱制度を維持する為に、そしてまたある者は柱である者を支える為に、その強い心を力に変えてきた。けれど

柱一人に頼らない、みなで支えるセフィーロは長い歴史から見ればまだ始まったばかり。魔法に振り向けるどころか、世界を

支えることでまだ精一杯なのだ。

 「ヒカルには話したんですか?」

 「オートザムに着いたらすぐ、昔、世話になったクレフの兄弟子の見舞いに行くとだけ」

 「――たったそれだけ?」

 呆れているようなイーグルに、ランティスが淡々と答える。

 「導師が何故いまセフィーロを離れられないか、ヒカルに言える訳がないだろう」

 光が決めた「柱一人に頼らない世界」は、柱の悲劇を知るセフィーロ城の者にとって、長く待ち望んでいた世界でもあったので

不安などはなかった。しかし柱の真実を知らない民の中には、何故柱がいない世界になってしまったのかと、逆に不安を感じている

者も少なくはなかった。そしてその不安な心は魔物を生み出す。だからといって、先代の柱が何故消滅したかなど説明して回る

訳にもいかない。セフィーロを救った存在であるにも関わらず、一番傷ついてしまった少女達のことを考えれば、多くは語れないのだ。

 「じゃあメルツェーデス氏が何をしてたかについては?」

 「話してない」

 「やれやれ。結婚早々そんなに隠し事ばかりでいいんですかね、この男は…」

 「事が片付けば話す。体調の悪いときにわざわざ聞かせる話でもないだろう」

 「ま、隠し事云々は二人の間のこった。ほっといてやれや、イーグル」

 ジェオのとりなしの言葉に、イーグルが大きく一つ息を吐き出した。

 「この件に関する情報収集をさせているジェオをあなたの補佐につけます。僕は首都でお留守番のヒカルと楽しくデートさせてもらいますよ」

 ぬけぬけと光とデートなどと言ってのけるイーグルに、ランティスが露骨に嫌な顔をした。

 「そんな顔するぐらい愛しい花嫁なら、僕に掻っ攫われないよう、無事に戻ってきてください。ヒカルの泣き顔なんて見たくありませんからね」

 「あぁ」

 「――結局お茶を淹れ損ねちゃいましたね。仕方ない、ウミにご馳走してもらいましょうか」

 怪訝な顔のランティスに、腕のギアを示してイーグルがにっこり笑う。

 「式のことでなにか頼みごとがあるっておっしゃってたでしょう?控え室とやらに案内してもらえますか、ランティス」

 指向性の高い集音マイクでランティスと海の会話をチェックしていたのだろう。敵地でもないのに抜け目のないイーグルだった。(ただのデバガ●?)

 

 

 ジェオはザズの最終チェックの様子を見に一旦NSXへと戻り、ランティスはイーグルを伴って控え室へ向かっていた。

 「前のお茶会のときは、『花婿の横に立ってればいい』って言ってましたよね。ベストマンとか言いましたっけ?花婿の友人として

指輪を導師に渡すぐらいで。花嫁の横に立つ…メイドオブオナーでしたか?それがウミで」

 「その二つの役は昨日王子達に代わってたな」

 「…王子って、あなたの『友達』でしたか…?」

 「昨日はバイシャクニン(媒酌人)とか呼んでたから、別にいいんだろう」

 自分の結婚式だというのに、一つ一つの細かい意味を把握しきれてないせいか、どうにもランティスはノリが悪い。近くまで来た

ところで、控え室ドアから出てきた海に出くわした。

 「遅いっ!いま呼びに行こうと思ってたのよ」

 「すみません。話が長引いてしまって」

 にこやかに詫びるイーグルの腕を取り、控え室に戻ろうとした海がランティスに言い放つ。

 「はい、あなたはココまで!光のウェディングドレス姿は本番までお預けよ。可愛く仕上がってるから、期待しててね♪」

 それほど可愛い姿をイーグルが先に見るのかと思うと、非常に面白くないランティスだった。

 

 

 窓際の椅子に白い花飾りを散らした純白のドレスに身を包んだ光が座っていた。光が城下町に出かけたときに知り合った少女、

ミラが届けてくれた白い花束に赤いリボンのブーケを手にして佇む姿は、いつもはじけるぐらいに活発な光とは見違えるようだった。

 「ヒカル、結婚おめでとう。とっても綺麗ですよ」

 「イーグル、朝早くから来てくれてありがとう」 

 「他ならぬヒカル達の結婚式のお役に立てるなら、真夜中にだって来ますよ。で、僕の役目に変更があるんですか?」

 「あのねっ、私の父様になって欲しいんだ」

 たいていポーカーフェイスの崩れないイーグルだが、光にお父さん呼ばわりされて固まってしまっている。お父さんというなら

ランティスのほうが遥かに適役だろう。(お父さんどころではすまない年の差である確率が高いが・笑)

 「光さん、その言い方ではイーグルさんが驚いてしまわれてますわ」

 口許に手を当てて、風がくすくす笑っている。

 「私が説明するから、これをみて」

 結婚式を行う聖堂の見取り図を引っ張り出しながら、海がてきぱきと説明を始めた。ひと通り聞き終わったところでイーグルが確認する。

 「ヒカルと腕を組んで、このドアから入って、ここを祭壇前まで歩いていけばいいんですね?」

 「腕組まなくていいわよ。光があなたの腕に手を添える感じかしら。それから、光は慣れないヒールを履いてるから、なるべく

ゆっり歩いて欲しいの」

 「判りました。…で、これとヒカルの、『お父さんになる』のと、何の関係が…?」

 いやにイーグルもこだわっている。

 「本来ならこのヴァージンロードを歩くときは、父親に手を引いてもらうのよ。で、祭壇前で花婿に『娘をよろしく』って

感じで引き継ぐわけ」

 「なるほど。でも、『お父さん』というなら、まだあの親衛隊長殿のほうが年齢的によかったのでは…?」

 どうやらラファーガのことがいいたいらしい。

 「まぁね。光のお父さんには、私達も逢ったことがないんだけど…、イーグルって光の一番上のお兄さんにちょっと感じが似てるのよ」

 「僕が、ですか――?ヒカル、いままでそんなこと、ちっとも言わなかったじゃないですか」

 「イーグルって誰かに似てるな〜、とは思ってたんだけどね。昨日、海ちゃんに言われるまで覚兄様に似てるって気づかなくて…えへ」

 光とイーグルが出逢ってから結構な歳月が経っているというのに、兄三人に過保護なまでに愛されて育った末っ子は、私生活では

どこかほわぁんとしているようだ。

 「父親代わりのお兄さん代わりってことですね、了解しました。それで僕の代わりに王子達が…えーと何でしたっけ?」

 「媒酌人よ。だって、フェリオじゃベストマンというほど仲良しさんでもないしね〜。それに私もこれを頼まれて、メイドオブオナー出来なく

なっちゃったんで、風達を媒酌人夫妻ってことでチェンジしたの」

 海がひょいと持ち上げた機械は、オートザムでも近いものがある。

 「光の下のお兄さん達に泣きつかれちゃったのよ。『可愛い光の花嫁姿が是非見たいっ!』って。お嫁にはやりたくないのに、ドレス姿は

見たいんですって。矛盾してるでしょ?で、ビデオカメラはちょっとセフィーロの人には頼めないから、自分でやることにしたの」

 王子達の結婚式のときは公式報道が入っていたが、今回はそれがない(というよりランティスがシャットアウトした)ので、自前でやる

しかないらしい。

 「でもそれではあなたがヒカルの晴れ姿を堪能できないでしょう?うちのジェオならそういうの扱えると思いますよ。NSXにも近い機器は

ありますし」

 「ありがと。でも、これは私が頼まれたことだから。それに嫌いじゃないのよ、こんな風に走り回るの。でも念のために、そっちにも

お願いしていいかしら?風の時のが、すっごく映像よかったから」

 公式報道と同じレベルを要求されても困るので、イーグルが釘を刺した。

 「いや、あれは報道が撮影した分ですよ。機器操作に慣れてても、ジェオは素人ですから」

 「あ、そっか。でもまぁ、私がドジっちゃったときの保険ってことで」

 イーグルと海が打ち合わせをしている間、プレセアがドレスのチェックをし、カルディナがメイクのチェックを済ませていた。

 「んーっ!いっつも以上にキュートになったなぁ、ヒカル。これやったらランティスもメロメロやで」

 カルディナの言葉に、光は真っ赤になり、振り返ったイーグルがくつくつ笑っている。

 「いや、あの人の場合、ヒカルにはいつだってメロメロだと思いますよ?」

 「そっそっそっ、そんなことないよ!」

 耳まで真っ赤になってしまった光に、プレセアが笑いかける。

 「そんなに照れなくていいのよ、ヒカル。幸せになってね?」

 「うん。なれるよ、きっと――!」

 恥じらいながらもキッパリとそう答えた光に少しまぶしげに目を細め、イーグルが時計を気にした。

 「そろそろ時間じゃありませんか?」

 「そうね、聖堂のほうに動きましょうか。あーっ、待ってイーグル!」

 先に控え室から出ようとしていたイーグルが、海の声に振り返る。

 「あなた、その格好で式に出るのかしら?」

 軍人であるイーグルは他国においても正式な場に出るときは軍服着用が基本である。結婚式なのでちゃんと式典用の礼装で

来ているのに、何が問題なのだという顔をして海に訊ねた。

 「オートザム軍の礼装なんですが、何かまずかったですか?」

 「それ、軍の礼装なんだ・・・。緑だとばかり思ってたのに」

 「ジェオやザズは緑ですが、僕の階級だとこうなります。で、何か問題でも?」

 「いや、花婿と色が被るなぁと思って。ま、仕方ないわよね。いいの、ごめんなさい」

 結局またしてもお茶を飲み損ねたなと思いつつ、NSXで光と(ついでにランティスも)一緒にお茶が出来るだろうとイーグルは

気を取り直すことにした。 

 

 

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当サイト限定事項

オートザム軍巡航艦ウイングロード…名前は日産車からいただきました

そして09年8月チャット会ネタの

腹黒い(笑)覚兄様≒イーグル登場です

(腹黒い、というか得体の知れないというか、底知れないというか… ←褒めてるのか?それ)

 

                                          

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