Someday

 

 

 「え…?」

 予定外な現われ方の光とランティスに風が一瞬言葉に詰まっている。近くの席で

進行役の風を見守っていたフェリオが、タンっとステージに上がって風からマイクを

取り上げる。

 「おいこら、ランティス! お前、お姫様抱っこはやりすぎだろがー!」

 フェリオの茶々に我が意を得たりとばかりに立ち上がったのはもちろん優と翔だ。

 「そうだそうだ!」

 「どさくさ紛れ過ぎるぞー! 光を返せーっ!」

 「「ぐえっ!!」」っと蛙を踏みつぶしたかのような妙なユニゾンと、乱暴に折り

畳み椅子に座り込むガタガタという物音が体育館に響く。

 後ろから首根っこを押さえられた翔がその腕をガシっと掴み返した。

 「どこのどいつだっ…って、覚にぃ!? 何すんだよっ!」

 優と翔を捕まえたままで覚が答えた。

 「舞台へ乱入する気だったろう?」

 「あったり前じゃないか! あんな暴挙を許すのか!?」

 「この場であれ以上のことにはならないから少し落ち着け」

 「達観してるね、兄さん」

 「…そういう訳でもないが、生徒会役員として学園祭の進行を妨げかねない行為は

放置出来ないんだ」

 生徒会長なのに一般生に紛れて客席で見ていたのは、『妹さんも出るんだし最終学年

ぐらいのんびりして下さい』という、下級生クラス委員長たちの思いやりだ。

 ステージ中央ではようやく自分で立った光が、くるりとターンをしながら愛らしい

ウエディングドレス姿を披露して喝采を浴びていた。

 「優さんも翔さんも後ろを向いてらしたら光さんの可憐な姿が見られませんわよ?」

 覚の隣に座っている空が、にっこりと助け舟を出すが、優と翔は眉間に皺を寄せて

顔を見合わせていた。

 「いつだって可愛い光がドレスアップしてるのは確かに見たい…だがしかしっ!」

 「隣にいるヤツが気にくわないんですっ! この複雑な兄心、解りませんか!?」

 「…困った方…」

 お手上げとばかりに空が微苦笑すると、自分もそこに入っているのだろうかと少し

いたたまれない覚がコホンと一つ咳払いをした。

 そんな揉め事を知らないのほほんとした末妹は賑やかな一角に兄達の姿を見つけて、

大きく手を振っていた。

 「兄様がたー! これ、似合ってるかなー?」

 それがごく普通の民族衣装であったなら手放しで褒めちぎりたい翔たちだが、花婿

よろしくエスコートしているヤツの姿に気勢を削がれ返事にどうにも元気がない。

 「お、おう…」

 「…何を着ても可愛いよ、光」

 おざなりな返事に光はかたわらのランティスを見上げた。

 「…反応薄いなぁ…。私、似合ってない?」

 「心配するな。このまま攫って行きたいぐらいに可愛い」

 「えへへっ。そっかな?」

 腕をさし伸ばしたランティスと指先を絡めながらもう一度くるりとターンをすると、

ランティスの服の袖をくしゅりと掴んで光がステージを退場していく。

 

 

 

 

 「…いつかはこんな日が来るんだろうな…」

 「…お兄様というより、お父様目線でしてよ?」

 ぽつりと呟いた覚の横顔に、空がくすりと微笑していた。

 

 

                          2014.6.21 up

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                            このお話の壁紙はさまよりお借りしています

 

 

先日twitterで殉さまが 深夜の真剣レイアース書描き60分1本勝負 という

企画を開催されてました

平日でもあり、その時は参加できなかったのですが

「六月の花嫁・花婿」のお題にこっそり乗っかってみました ぺこ <(_ _)>

 

当サイトのセフィーロサイドの話では三人とも結婚式しちゃった後なので

掟破りのパラレルサイドのお話です

しかも、こんなだし・・・(所詮色気のなさがウリのCbs&Crsクオリティ)

 

ちなみに衣装のほうですが、ランティスは軍の式典のときのイーグルの服装、

光ちゃんはザズが作ってたぱよんぱよんの衣装のイメージです(=^_^=)