ひかりのどけき春の日に・・・
もともと聖レイア学院の剣道部は特に名だたる強豪という訳ではない。獅堂四兄弟が在籍した
ことでにわかに全体のレベルが嵩上げされ始めているところだ。実際問題として、去年一年生
ながらに全国大会を制した光などはすでに女子部員では相手が務まらず、高等科男子と打ち合う
ことが多いぐらいだ。そんな光たち獅堂四兄弟を練習相手にしている剣道部員は獅堂流剣道場に
ただで通っているに等しく、自然と腕が上がっていくという状態だった。
学院の方針としてよくあるスポーツ強豪校のように選手を集めるようなことはしていないが、
ここ数年は獅堂兄弟との切磋琢磨を望んで受験した生徒もいるくらいだ。正確には覚はすでに
部活にはほとんど出ていないが、それでも籍は残しているので手合わせ出来れば儲けものという
ところらしい。
「段位審査は受けるのか…?」
「もちろん! 二年になったらやっと初段の受審年齢クリアなんだもん。この先を考えたら
なるべく早くにパスしなくちゃ」
初段にさえ合格すれば、光ならその優秀さを認められて本来の一年を待たずに二段をクリア
できるだろう。
「ランティスは受けないの? ・・・って、受験が先だもんね」
聞くだけ聞いて自己完結している光に、ランティスがふっと微笑った。
「正直言って段位には興味がないんだが、それでは拙いか?」
「拙いって? 何が??」
きょとんとしている光は本当に何も思い当たらないという表情だった。
「段位も持たない男では、お前の相手に相応しくないと思われたりしないか?」
「そんなことない! だってランティスは兄様がたに勝ったんでしょう? 誰にも文句なんか
言わせないよ」
「…どうしてそれを…」
ランティスはそれに関して沈黙を守っていたし覚が話すとも思えない。
「このあいだ翔兄様がね、ぽろっと口を滑らせたんだ。ランティス相手にやけにむきに
なってた理由がやっと判ったよ。過保護なのもほどがあるんだから…ホントにもぅ……」
ぶつぶつと文句を言うさまも可愛らしく、兄たちが構いたがるのも無理からぬことだろう。
「言わせておくといい。俺は気にならない」
「…うんっ!」
鷹揚に構える姿がとても頼もしく思えて、光はきゅっとランティスのシャツの背中を握り
締めていた。
・・・ランティスの進路を聞いた光が驚くのは、もう少しだけ後のこと・・・。
2012.8.8
光ちゃん、Happy Birthday☆彡
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誕生日だというのに、まったく誕生日に関係のないお話になってたり…。
「太陽のリング」より前の光ちゃんがもうじき中学二年になる春休みのお話です。