すくーるでいず 特別編  ―― 遠雷 E・N・R・A・I ――

            feat. R.Tsuruga & Kyoko

 

 

 『レンとキョウコさんからのお届け物があるから、放課後にでもいらっしゃい』とミセス・アンフィニに

誘われた光はランティスの教室にお邪魔してそのメールを見せていた。

 「…朝、顔を合わせた息子には何も言わなかったくせに…」

 なにゆえガールフレンドが母とメル友になっているのかと、ランティスはいささか頭痛を覚えていた。

 「ランティスが登校してから届いたのかもしれないよ?」

 ただ単に光に(二人に?)ちょっかいをかけたがっている気がしてならないのは考え過ぎだろうか?

 「学年末も終わったし入学試験準備があるからクラブ関係も休みだったな。…今日来るか?」

 「寄ってきてもいい?覚兄様」

 ランティスのひとつとばした隣の席にいる長兄に光がお伺いを立てる。

 「・・・理事先生のお招きじゃ仕方がないな。ご迷惑にならないようにね」

 「はい」

 「ヒカルならいつでも歓迎だ。娘にしたくてウズウズしてるからな、あの人は…」

 「うちにだって女の子は光ひとりしかいないんだから、そう簡単には嫁(や)れないね。顔を洗って

出直して貰おうか」

 「覚さんったら…」

 ランティスと覚の間の席の鳳凰寺空がくすくす笑っている。

 「シスコンもほどほどにしたほうがいいな、サトル。ミス聖レイアが呆れてるぞ」

 「あら、そんな…」

 そう言いつつ明確な否定がないのは、少なからずそう思っているということだろうかと覚が渋い顔を

している。

 「あのっ、えっとっ…、覚兄様はいつもここまで過保護じゃないから…。優兄様や翔兄様のほうが

もっとずっと構いたがりだもの、覚兄様は大丈夫だよ?空お姉ちゃん」

 覚のこれまでの球技大会のハチマキの贈り主とちいさき薔薇の舞踏会のパートナーがずっと変わらず

その女性(ひと)であると知った光が、兄の心証が悪くなることのないようにと言い繕う。だが妹にそんな

フォローを入れられてはますます立場がない。

 「余計な心配するな。光には関係ない」

 覚らしくないぞんざいな言い方に光がびくりと肩を震わせた。

 「…関係ないって…」

 不良相手には一歩も怯まない強さを見せる光だが、日頃猫可愛がりな兄から突き放されたことは

思ったよりも痛かったらしい。

 「……ランティス、また放課後ね…」

 やっとそれだけ搾り出してパタパタと教室から駆け出した光をランティスが追っていった。

 「泣かせたりして、しようのない人…」

 「…ランティスが行くからいいんだ」

 「もう少し上手に妹離れなさいませ」

 ふうっと疲れたようにため息をついた覚に空が微苦笑を浮かべていた。

 

 

 

 「ヒカル!」

 『獅堂の妹泣かせてんじゃないよ』と揶揄する同級生がたむろする教室前廊下を大きなストライドで

やり過ごしたランティスが、人気の途切れた東館と西館の連絡通路で追いついた光の肩をぐっと掴んだ。

勢いよすぎたせいか、急ブレーキをかけられた光はランティスに抱き留められている。

 「うにゃっ、あの、ごめんなさい…」

 受け留めついでの役得とばかりに背中越しに抱きしめ、少し背を屈めて光にささやきかける。

 「ヒカルが謝るようなことは何もない」

 頭上から零れてくる優しい囁きは熾天使を思わせ、光は背中がざわざわしていた。

 「こそばゆいよ、ランティス」

 「…くすぐってるつもりはないんだが」

 「ランティスが話すたび耳に息がかかってくすぐったいんだったら。もうお昼休み終わっちゃうよ」

 「待ち合わせ場所を決めてなかっただろう?Libra≪天秤宮≫αの教室に迎えに行くから…」

 「…うん」

 「サトルのあれは照れ隠しだ。解るな?」

 「……うん」

 「これまで大切に護ってきたお前の手をどうやって放せばいいのか、あんまり長い間繋いでいたから

加減が判らなくなってるだけだ」

 「うん…」

 あとの二人はもっと判らなくなっているだろうなという思いが脳裡を掠めたが、今は言わずにいようと

決めたランティスがもう少しだけ抱く腕に力を込めていた。

 「これからは俺がいるから」

 包むように抱きしめている腕のカッターシャツの袖をぎゅっと掴んで、まだ少しぎこちない笑顔を作った

光がランティスを振り仰ぐ。

 「兄様たち三人分だよ?ランティス一人で。面倒見るの大変だって投げたくなるかも…」

 「なぜ投げたりする?あいつらが1/3ずつだったヒカルとの時間を俺が独り占め出来るのに…」

 独り占めという言葉に耳まで真っ赤になっている光の頬にランティスの大きな手が触れ、頤(おとがい)

かかった小指が僅かに掬い上げた時、5時限目の予鈴が響いてきた。

 「あ、教室に戻らなくちゃ。また放課後ね」

 バイバイと手を振って階段を駆け下りていく光を見送りながら、「危ないとこだった…」とランティスが

ぼそりと呟く。

 「…『口説き』が女子中学生への災厄なら、『指南』は男子高校生を犯罪者に堕とす威力があるな…」

 スタジオ見学に行ったあの日、業界では温厚紳士で通っている敦賀蓮にいったい何を指南されたのか、

かりかり後頭部を掻きながらランティスも教室に戻っていった。

 

 

 

 放課後、学院敷地裏手のアンフィニ家でランティスが私服に着替えるのを待つ間、光はキャロルの

歓迎を受けていた。

 「いらっしゃい!寒かったでしょう?すぐお茶を淹れるわね」

 「あの、お構いなくっ!」

 「キョウコさんがね、『バレンタインデーが近いし、撮影でお世話になったからよろしければ召し上がって

ください」って、手作りのお菓子をくれたの。『一番の功労者の光ちゃんにもぜひ』ってね」

 「忙しい女優さんなのにお菓子まで作れちゃうんだ…」

 ミセス・アンフィニにも手作りのケーキをご馳走になったことがあるし、もっとお料理もがんばらなくちゃと

光が心中ひそかに誓っていた。

 「そうそう。先に渡しておくわ。これ、『彼に見つからないように持って帰って』って。かばんにしまえる?」

 「サブバッグに入りますけど、何だろう…?」

 聞いていたものなら封筒サイズのはずなのにと光は首を捻っていた。

 「さぁ、おうちに帰ってからのお楽しみじゃない?よければあとで教えてね」

 くすくす笑うキャロルにサブバッグに荷物をしまった光が頷いた時、着替えを済ませたランティスが

入ってきた。

 「…何を教えるんだって…?」

 「き、聞いてたの?ランティス…」

 『内緒で』と言われていたのにまずったかしらとキャロルが探りをいれる。

 「・・・・『教えてね』ってところだけ。俺に聞かれてはまずいんですか、母さん」

 「だってー、女の子同士のヒミツなんですもん。ねー?ヒカルちゃん」

 「う、うん!だから、ごめんね?」

 いい歳をして『女の子』だなどとほざく母親にこめかみがひくりとひきつったが、申し訳なさそうな光の

上目遣いにランティスはそれ以上の追及を諦めていた。

 「でね、レンからのプレゼントはそっちよ」

 テラス窓のそばに以前お邪魔した時は見なかったイーゼルが2台置かれており、上には白い布と

赤い布がかけられていた。

 「白いほう見せてあげなさいな、ランティス」

 キャロルにそう言われたランティスが歩み寄って白い覆いを外すと、光が目を見開いていた。

 「あのっ、これ、ひょっとしてあの時撮影してたスチール!?サイン入りだっっ!」

 「そう、二人の直筆サイン入り!この間、『色紙持って来れば良かった…』ってヒカルちゃんしょんぼり

してたから、ヤシロさんを通して頼んでみたの」

 「わぁっ!ありがとうございます」

 「主演二人の舞台挨拶のあるプレミアショーのご招待券も預かってるわよ。ランティスと二人でいって

らっしゃいね」

 「舞台挨拶!?そんなの見るの初めて」

 「レイトショーになるからそのつもりでいてね。私からレイに言ったほうがいいかしら?」

 「あ、いえ、大丈夫です。母様にも兄様にもちゃんとお許し貰いますから」

 「そう。さ、お茶が入ったわよ。うちがイギリス出身の家系だからかしら、アイリッシュケーキを焼いて

くださったんですって、キョウコさん」

 キャロルが包みを解いて切り分けにかかるが、とてもいわゆるパウンドケーキ系を取り分けているとは

思えない大胆な切り方だ。

 「私の手作りおやつは容赦なく無視してくれるけど、お祖母様のお手製なら『義理の一切れ』だけ

食べるのよ、ランティスって」

 「あれは…、食べないと具合が悪いんじゃないかと祖母様(ばあさま)が心配するから仕方なく…」

 「だから『義理』?優しいなぁ」

 キャロルのリムジンでご馳走になったフルーツタルトの甘い香りだけでもげんなりしていたランティスを

思いだし、光がくすくす笑っていた。

 「『ランティス君は甘いのが苦手と伺っているので、甘さを控えてみました』とまで言ってくれたのよ?

人気女優のお手製ケーキを食べないなんてバチが当たるわ。映画の番宣で顔を合わせた時に感想も

伝えなくちゃいけないんですもの。バレンタインは男の子が主賓なんだから、あなたは真ん中の1/3よ」

 幾分真ん中が盛り上がっていた一本なので、等間隔で切られたそこは両端に較べて確実に質量が

大きい筈だ。

 「こういうのは『一切れ』と言わない。『ひとかたまり』だ…」

 「大きいなりして、細かいこと気にしないの!」

 取り付く島のないキャロルをランティスがぎろっと睨んでいると、応接室のドアがノックされ執事が

顔を出した。

 「ご歓談中に失礼致します。欧州リサイタルツアーの件で主回線にお電話が入っておりますがこちらで

お受けになりますか、奥様」

 「そうね…、いえ、そちらに行きます。お招きしておいてごめんなさいね、ヒカルちゃん」

 「あ、いえ。ホントにお構いなく…」

 「サイン入りポスターは二種類あるから好きなほう持って帰ってね。レンたちからのお届けもの、

もうひとつあるのよ。むしろこちらがメインかしら、ふふふふっ」

 さっきから光がちらちらと気にしていたもう一台のイーゼルの覆いを大胆に取り払って、「ごゆっくり♪」と

言い残してキャロルが応接室を出ていった。

 前売り券についてくる映画のポスターと同じB1サイズに仕立てられたツーショット写真に、光は耳まで

真っ赤に茹で上がっている。

 「な、な、な、何これ〜っ!?」

 そのシチュエーションは確かに記憶にある。都合三回の衣装替えで臨んだ試演の一番最後に着用した

着物姿の光が、慣れない草履の痛さにたまり兼ねてカットの声がかかると同時に座り込んだランティスの

背中から「お疲れさまでした!」と抱き着いたところを撮られていたのだ。

 「役者のイメージトレーニング用にしたいからとマネージャーがハンディカメラ回してただろう?多分あれだ」

 小さいながらも高性能な物を使っているのだろう。正面から撮られて二人とも気づかなかったぐらいなの

だから、かなりズームアップしている。

 「嬉しいような恥ずかしいような…。でもこんなの見つかったら兄様たちに何言われるか…」

 「こちらで預かろうか?」

 「えー、でも着流しで刀抱えてるランティスってカッコイイんだもの。部屋にこっそりしまって一人で堪能するよ。

エヘッ」

 「サイン入りポスターは二種類あると言っていたが…」

 ランティスと光の写真には当然ながらサインはない。何を思いついたのかランティスが裏側を覗いて、

「そういうことか…」と呟き、二枚のパネルを表裏にして置き直した。

 「うわぁ…、両面仕立てなんだ」

 超がつくほどの売れっ子芸能人としてはずいぶんシンプルなアルミフレームに額装してきたと思ったら、

こんな仕掛けをしていたのだ。過保護な兄たちを欺くべく、普段はポスター側を表にしておけばいいということ

だろう。

 「ヒカルはどちらのポスターがいい?」

 「ホントに私が決めていいの!?」

 「三回も着替えた一番の功労者はヒカルだからな」

 どのみちランティスは光との写真のほうしか見ないのだから、どちらでも差し支えない。

 「どっちも素敵なんだけど…」

 スタジオ見学の日に撮影すると言っていた、出逢った時の『義彬』と『楓』の関係性を表したものだろう。

モノトーンを背景に背中合わせに立ち、思い詰めた瞳で守り刀の鯉口を切る『楓』と、僅かに振り返り気味に

憂いを帯びたまなざしを『楓』に向ける『義彬』…普段時代劇に興味のない若い女性もこのポスターの敦賀蓮に

堕とされて劇場に足を運ぶことだろうと思えた。

 そしてもう一枚は、朱く彩(いろ)づいたカエデの葉がはらはらと舞い散る中、『義彬』にふわりと抱き寄せられた

『楓』がうつむき加減にはにかんだ微笑みをたたえていた。

 ナチュラルメイクはしていたのだろうが素の顔に近い状態を見てしまったランティスには、いまだに『京子』と

『楓』が同一人物とは思えない。

 もっとも光にDVD−BOXを無理矢理貸し出された『DARK MOON』の『未緒』や、交換日記でネタを振られ

続けてやむにやまれず見ていたBOX”R”の『ナツ』、光がクラスメイトから借りてきて一緒に見た不破某のPVの

『天使』に較べれば、「言われてみれば気づける」レベルではあるが。くだんの三役は「言われてもにわかに

信じられない」ほどの化けっぷりだった。←ランティス失礼過ぎ・笑

 いつかメイクをするようになったら光もあんな風に劇的に美しくなるんだろうかなどとぼんやり考えていると、

光が「んーっ、こっち!」とモノトーンのほうを指さした。

 「意外だな。ヒカルの好みはこっちのほうだと思ったが…」

 こころもち顔を傾けて尋ねたランティスがカッコイイというのかなんだか妙に艶っぽく見えて、光の心臓は

にわかにバクバクうるさくなっていた。

 「えっ?あっ…と、えへへっ、ばれてた?でもそっちはなんだかオトナ過ぎて、ちょっと自分の部屋に置くの

恥ずかしいんだもん。たまに遊びに来た時に見られるだけでいいよ」

 自分の部屋で、光と二人きり、こんな『愛しい女性(ひと)を抱き寄せる男』の図を見るだなんて、それは

ある種の拷問ではないだろうか…。

 そうは思ってもまだまだ子供な光にそんなことを言ったなら、怯えられるかもしれない。不意にまたあの日

衣装に着替えながら敦賀蓮が『指南』したあれこれが脳裡をよぎり、少し落ち着かなければとランティスは

ソファーに腰を落として冷めかけた紅茶に手をのばした。

 「理事先生が淹れてくださったお茶冷めちゃうね。いただきます!あ、ランティス、ちゃんとケーキ食べなきゃ

ダメだよ!?私、しっかり見てるんだから。私も食べるし…。・・・・くっあああ…」

 「?」

 「お、大人の味かも…」

 監視官がいるので、致し方なくランティスも一角をフォークでカットして口に運ぶ。そこにあるだけでも明確に

香り立っていたアイリッシュウィスキーだけでなく、フルーツを漬け込んでいたのだろうブランデーの風味も

渾然となって口いっぱいに広がった。

 「…ヒカルにはキツすぎるんじゃないか?」

 くすりと微笑ったランティスに、子供扱いされた気がした光は意地を張っていた。

 「そんなことないよ。もう中学生なんだから、このくらいへっちゃらだもん」

 そう言いながら、えらく早いピッチでパクパクとアイリッシュケーキを食べていく。

 「おい、そんなペースで食べていたら、本当に回るぞ」

 「平気だよ。すっごく綺麗で、お芝居が上手くて、お菓子も美味しくて……。なんでも出来て素敵な人だよねぇ、

京子さんて」

 「…『役に入れば綺麗』だったな」

 「わぁ、そんな酷いこと言うのか!?こんなによくして貰ってるのに…」

 「普段は『綺麗』というより『可愛い』のタイプだったろう?」

 「・・・ランティスがそういう風に女の人評価するの、初めて聞いたかも…」

 ほんの僅かに声音にヤキモチの色が入っているように思えるのは気のせいだろうか。

 「それは…ヒカルが話を振るからだ」

 「四年経ったら私もあんな風になれるかな」

 「ヒカルはヒカルだ。他の誰かになる必要なんかない」

 「そう?目標ぐらいあってもいいんじゃないかと思うんだけど……。さっきからちっともランティスのケーキ

減ってないじゃないか。だいたいそんなにちまっとした食べかたじゃ味が解らないからダメだよ」

 一口食べてフォークを皿に置いていたランティスに光がダメ出しをしていた。

 「……甘さ控えめで、酒がきいているのはよく解った……」

 彼女もランティスと同じ年なのに、よくもまあこんな大人風味の物を作ったなと驚くぐらいには強烈に酒が

きいていた。

 「これはランティスの分なんだから、全部食べなくちゃダメ!はい、あーん♪」

 なかなか続きに手を出さないことに業を煮やしたのか、光は隣にちょこんと座るとお皿を手にして大きく

カットしたケーキを突き刺したフォークをランティスの口元に差し出していた。

 「…子供じゃないんだが…」

 「知ってるよ・・・私の酌はいやなのか・・・?」

 そもそも酒でもないのに(確かにこれでもかというぐらい強烈にきいてはいるが)その言い方はおかしいだろうと

指摘しようとしたランティスが口をつぐんだ。光は頬が桜色に染まり、心なしか目つきがとろぉんとしている。

 学年末テストの為に遅くまで起きていた上にこの強烈な酒のきき具合で、どうやら酔っているらしい。

 「…だからよせと言ったのに…」

 光に差し出されたケーキを食べもせずため息とともにそう言ったランティスに、光が言い募った。

 「……私の酌では……いやなんだな…?ふえ…っ…。食べ物…粗末にしちゃ……うっく…ダメなのに……っ。

ランティスが食べてくれないなら…私が食べる…っ!」

 しゃくりあげながらまたケーキに齧りついた光に焦ったランティスが慌てて皿を取り上げ、口に入った物を

咀嚼してる隙に右手のフォークの残りを取り上げた。

 「お前が泣き上戸なのもよく解った…。これはもうやめたほうがいい」

 「京子さんが…ふぇっく…心をこめて作ってくれたのに、…食べなきゃダメだよ」

 うぅっと、泣き顔で睨んでくるのも可愛いが、ここで泣かせたら母親に何を言われるか判ったものじゃないので、

ランティスは光を宥めにかかった。

 「ちゃんと全部食べるから、泣くな」

 光が作った物を食べないで泣かれるならいざしらず、社交辞令程度の菓子を食べないからと泣かれたのでは

堪らない。

 結局ランティスは『義理の一切れ』ならぬ『義理のひとかたまり』を完食する羽目になっていたのだった………。

 

 

 

  「…もう、話が長いんだから…。お紅茶、おかわりはいか…が・・・!?」

 応接室のドアを開けたキャロルが途中で絶句する。

 「ああ……息子の理性を信じた私が…馬鹿だったのかしら………?」

 キャロルが部屋から出るとき一人掛けのソファーに座っていたはずの光が息子の隣にいて、その息子・

ランティスは光の肩に腕を回して抱き寄せていた。

 「…レイになんて謝ればいいのかしら。『責任持ってうちにお嫁にきて貰うから』…あら、うちに都合がいいわね、

それ…」

 ぶつぶつ言いながら正面に回り込むと、何のことはない、二人ともすやすや寝入っているのだ。

 「キョウコさんのケーキ、アイリッシュウィスキーきいてそうだったものねぇ…。昔からウィスキー・ボンボンに

弱かったけど、まだお酒に弱いのかしら。男の子なのに…」

 未成年が酒に強くてもいかがなものかとは思うものの、これではあまりに情けない。

 「二十歳になったら、クルーガーとザガートに鍛えて貰いなさいね」

 

 iPhoneアプリのサイレントカメラを起動して息子たちのツーショット写真を隠し撮りしたキャロルは、

いたずらっぽい笑顔を浮かべながら添付ファイル有りのメールをある人宛に送信したのだった。

 

 

                                                  2012.2.26 up

 

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当サイトオリジナルキャラ

レイ(獅堂麗)…獅堂四兄弟の母。茶道獅堂流師範。光岡自動車のRayより。

 

映画のポスターと両A面になってたランティスと光のツーショット写真が

この話を書くきっかけになった、 

ランティス光同盟のギャラリー内

ランティス×光 投稿強化作戦 ⇒04.たまにはこんなのも・・・byテンさま

・・・ということになります

 

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