ミ☆KIRA☆KIRA☆彡
今日は地球のサンクスギビングデー(収穫感謝祭)由来の大がかりなお茶会で、
ちょっとしたパーティ料理も振る舞われるとあってチゼータの姉妹姫御用艦
ブラヴァーダの乗組員達も半舷上陸で参加している。そのせいでいつもは
静かな庭園も人で溢れかえっていた。
昔に比べて改善されたとはいえ、不特定多数と触れ合うのがいまだ得意と
いえないアスコットは人の多さだけでくらくらしそうだった。
「どこにいるんだろう、ウミ」
きょろきょろとそこらを見渡していると、不意にその涼やかな声が耳に
飛び込んできた。
「商談成立! ショップの運営はなるべく地元の人達に任せたいから、
いい人がいたら推薦してね」
「なーんやあれこれウマいことウミに丸め込まれた気ィがせぇへんでも
ないんやけど…」
「うふふふ。交渉術はウミのほうが上手(うわて)だったわねぇ。タータは
もっとお勉強しないと…」
「姉様! なんで黙っとるんや!? そない思うンやったらちゃっちゃと
助け舟出さんかーいっ!!」
「タータったら、こ・と・ば・づ・か・い。ウミが一人で交渉してるん
ですもの。タータも一人で応えなくてはいけないわ」
妹姫を諭しつつ、タトラが呆けたように自分たちを見つめる視線に気づく。
「あらぁ、何をそんなに見蕩れてるのかしら?」
その視線を追って振り向いた海がにこりと笑う。
「遅くなっちゃってゴメンね、アスコット。お帰りなさい」
「え? あ、うん…。いつもと感じが違うから、なんか見違えた…」
ぽろりと零れ出た戸惑いの気配に、海が自分のいでたちをまじまじと見て
苦笑いした。
「これ? あー、今日のプレゼンは会社的にかなりリキが入ってたから
もうバリバリのビジネススーツでキメちゃったのよね。時間押したから
着替えに帰ってる余裕がなくて…。大丈夫よ、収穫作業に出られるような
服ならこっちにちゃんと置いてあるから!」
「…うん…」
ピシリと身に馴染んだビジネススーツ姿に戸惑ったのも嘘ではないけれど、
交渉を纏め上げてタータやタトラと握手を交わした笑顔が目を刺すほどに
きらめいていて、自分が窺い知ることの出来ない東京での海を垣間見たようで
その遠さを突きつけられた気がした。
「ちょっと元気ない…?」
また少しぼんやりしているアスコットを気遣い、海が額に手をのばす。
「大丈夫だよ」
「そう? この時間じゃお腹も空くわよね。まだ何も食べてないでしょ?
取り分けましょうか?」
「え? いや、その…。ウミはセフィーロに来たお客さんなんだから、
そんなの僕がやるよ」
「…お客さんだなんて言い方、なんだかよそよそしいわ…」
少し拗ねたような海の声音に、アスコットが慌てる。
「そんなつもりじゃ…!」
「こぉら! こないなとこで痴話喧嘩はナシやで。ケンカすんのもイチャ
イチャするんも、美味しいモン食べて部屋にすっこんでからにしぃ!!」
カルディナの絶妙なカットインに、二人は顔を見合わせる。
「別に喧嘩もイチャイチャもしてないけどね。じゃ、今日はアスコットに
サーヴしてもらおうかな」
「うん。適当に取ってくるよ」
「ホントにここまで見に来たのね。今日は干しプラグ入りパウンドケーキの
レクチャーもあるから、タトラたちにかかりっきりになれないわよ?」
白い長袖Tシャツにデニムのオーバーオール姿の海が両手を腰に当てながら
言った。
「ええ、それで構わなくてよ。少し見ておきたかっただけですもの」
「セフィーロ産品のメインは果物やろ? 果樹園に視察入れるんは当たり前
やないか」
たわわに実る果実を物珍しげに、かつ厳しく査定しながらタータが答えた。
「そりゃまあごもっとも」
小さく肩を竦めた海をアスコットが呼びに来た。
「ウミ、今日の参加者みんな揃ったよ」
「はーい! …って、うわっ、こっちの準備がまだ出来てなーい!!
ちょっとアスコットも手伝って!」
「う、うん」
ひょろりと背高のっぽのボーイフレンドを従えて駆けていく海の後ろ姿を
姉妹姫が見送る。
「…ウチとの契約纏めた時より楽しそうやなぁ、ウミ」
「うふふ。今日のパウンドケーキは少ぉし甘く仕上がるかもしれないわね」
「チゼータに輸入するモンのチェックはビシっとやるで! 姉様、行こ!」
微笑ましげに海たちの背中をほわりと見遣る姉姫を、せっかちな妹姫は
ぐいぐい引っ張っていくのだった。
2015.3.3
海誕記念
☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*
このお話の壁紙は 素材屋HP素材のおすそわけ。 さまからお借りしました
殉@kanzakijyunさま主催によるツイッター恒例企画、
第5回 深夜の真剣レイアース書描き60分1本勝負に参加させて頂きました。
お題は 龍咲海ときらめきの時間 。
2014.10.18AM7:00-8:00の60分(HPへの編集時間を含まない実質執筆時間)で
未完のままEvernote公開していたのを、なんとかまとめました。
サンクスギビングデー云々というのは秋に書いていたからです(;^_^AA
執筆スピードのダウンから、季節感のズレがぱねぇ(滝汗)
ともあれ、海ちゃん、ハピバ☆彡 ★彡 ☆彡 ★彡