恋するしっぽ vol.3
立てた片膝に腕をのせるような格好で座り込んだランティスのそばに、きらきらとしたひかりの粒子が現れ、
やがて一つの形を結んだ。
「ヒカルは…?」
「まだ朝までは大分あるだろう?それにしてもあれはひでぇはねっかえりだ。勝手なことばかりしてくれて
世話が焼けて敵わん。あのちびさん、腕輪を落としていってたよな?」
ランティスが手にしたままだったブレスレットにに近づき、スパーキーは警察犬のようにくんくんと匂いを
かいでいた。
「何をしている…?」
「ちょいと見失っちまったんでね、匂いを確かめにきたのさ。それにしてもこんなにうろうろさせられたんじゃ、
ごちそうを大盛りにしてもらわなきゃとても割が合わんな」
「ヒカルが無事なら、俺の記憶ぐらいいくらでもくれてやる」
「ふふん、言うねぇ。それじゃあもう一仕事してくるか」
ふたたび姿を消したスパーキーを黙って見送ったあと、ランティスは近くの梢で様子を窺っていた妖精たちに
気にかかっていたことを尋ねた。
「お前たちも、ジータと同じ考えなのか?」
「…ジータの気持ちも、そりゃあ解らなくはないけどね。あれはもうどうしようもなく、避けられないことだった」
「君の兄上を喪った時の姫は、本当にこの世界なんて要らないと思っていたんだから。柱として…いや、
人としての良心さえ、もう風前の灯だった…」
「そう。だから仕方がないことだ。ただまぁ、≪柱≫として出来損ないなのは確かだがね」
「ヒカルはもう柱じゃない…」
抑揚に欠けるランティスの答えに、妖精の一人が苦笑した。
「口ではそう言ってるが、お前だって信じてはいないじゃないか」
「……っ!」
「確かに姫のように一人で世界を背負ってはいない。あんたやクレフだけじゃない、何の力もない市井の民に
至るまで、程度の差こそあるがこの世界を支えてる。けどやっぱり中心はあの娘だ。それは変わらないんだよ」
「なのにどうにも自覚が足りなくてバランスが悪い。だから出来損ないってな」
そんな風に言われても歴代の柱と違い全属性使いではない光では、自然界のすべてに満遍なく力を及ぼす
などということははなから不可能に思えた。
「…どうしろと言うんだ」
「それはあの娘の心次第だ。誰が何を言ってもどうなるものでもない。ま、こういう揺らぎもまた一興さ」
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