KO★A★LANTIS

 

 海を連れたまま《近道》をちゃんと通れる自信のなかった光は、普通に歩いて中庭まで

降りてきた。

 「プレセアは中庭だって言ってたけど、居ないじゃない。部屋に戻ったのかしら」

 「それならクレフが何か言ってくれそうだけど…」

 ぐるりと見回した光が「あっ!」と小さく声をあげ、釣られて海もそちらを見遣った。光が

駆け出すと海も慌ててそれを追いかけた。光が見上げたそこには、大きな幹にもたれ

掛かりうたた寝をしているランティスと、そのランティスの腕に抱きつくような格好で

寝入っているレヴィンの姿があった。

 あまりのことにぽかんと見上げていた海の肩がふるふると震えだす。

 「・・・きゃはははははは、あ、ありえない!光んちの旦那が樹の上で昼寝するのは

知ってたけど、親子でやってるだなんて、コアラ以外にありえないから〜っっ!!ああもう

うちのママったら、グッジョブ!!」

 爆笑しながらポーンと海が放り上げた特大のお土産は、海の母親がオーストラリアで

購入したほぼ実物大のコアラのぬいぐるみだ。

 「海ちゃん…そんなに爆笑しなくてもいいじゃないか」

 「だってぇ、レヴィンの掴まりようったら、まるっきりコアラなんだもの。笑わずには

いられないったら」

 「・・・・うー・・・ん、・・・ママぁ・・・」

 海の笑い声で眠りを妨げられたのか、レヴィンはぐずる時のママ呼びになっていた。

 「・・・寝入ったばかりなのに起こすな・・・」

 不機嫌そうな低い声に海がぎくりとなる。

 「あらやだ、コアラじゃなくてタヌキ《タント》寝入り?」

 「もう、タントじゃないったら…。ただいま。お昼寝の邪魔しちゃったかな…?」

 「・・・かあしゃん・・!?」

 自分がどこにいるかなどまったく気にしていないレヴィンが光の声がした方に向かって

無意識に手を伸ばし、頭の重みでバランスを崩して落下した。

 「きゃあっっ!」

 悲鳴を上げて目をつぶった海だったが、いつまでたっても地面にぶつかる音がしないことを

怪訝に思いおそるおそる薄目をあけた。樹のほうを見遣ると光の手よりまだ高い位置で

レヴィンの身体がぼわんぼわん弾んでいる。

 「心配ないよ海ちゃん。ちゃんとランティスが殻円防除の応用で落下防止ネット張り巡らせて

くれてるから」

 「人騒がせな・・・」

 きゃっきゃと面白がっている息子を抱え上げたランティスが光の前に降り立つ。

 「ただいま〜。ちゃんとお留守番できた?レヴィン」

 「かあしゃん、だっこー!」

 「甘えん坊だなぁ、もう。ほら、おいで」

 クッション性に幾分欠けていても(爆)やはり母親の胸は特別なのか、レヴィンはぎゅうっと

しがみついていた。

 「いい子にお留守番してたレヴィンにお土産があるのよ〜。おっきいでしょう?」

 目の高さで振られるそれにレヴィンが嬉しそうに右手を伸ばすが、とても子供が片手で

持てる大きさではない。

 「ほら、母様にしがみついたままじゃ貰えないよ?レヴィン。おんりしなきゃ」

 自分の身長と変わらないぐらいの特大でやわらかい手触りのぬいぐるみと、母親の顔を

レヴィンの蒼い瞳が何度も往復していたが、どちらか選べといわれたら母親以外になかった

ようだ。

 「や・・・。かあしゃん」

 あまり豊かとは言えない胸に顔をうずめて、レヴィンが半泣きになっている。

 「しょうがないなぁ…。父様に持ってもらおうか。ランティス、この白い大きな紙袋3つとコアラ

持てる?」

 「そのぐらいなら仕舞える」

 もともとランティスの宝玉はティーテーブルのセットすら仕舞いこめるのだから、そのぐらい

造作ないだろう。瞬く間に引き出物三つを仕舞いこんだが、海から受け取った特大コアラを

仕舞おうとしたときレヴィンが手を伸ばしてきた。

 「ないない、や!!」

 「そうよねぇ、せっかくなんだもの。見えるところにあるほうがいいわよねぇ?レヴィン」

 余計なことを言ってくれるなと内心でひくつきながらも、ランティスは無表情を装っている。

 「うん・・・ぁい」

 「『ぁい』じゃなくて、『はい』だよ。まだ難しいのかなぁ・・・」

 「じゃ、光。今日はお疲れ様。私も帰って荷解きするわ。アスコットが見ても正体不明のもの

多そうだし」

 新郎の妹としての礼儀で光は海に深々と一礼する。抱っこされたままのレヴィンは楽しげに

きゃっきゃと笑っている。

 「兄様たちの為にご足労頂きありがとうございました。ここまで送ってくれて助かったし…。

じゃ、またね」

 ばいばーいと手を振るレヴィンに手を振り返しながら、息子の手の届くところでコアラを抱き

かかえているランティスの不機嫌オーラ立ち昇る背中を見送る海の口元に笑みが零れた。

 「……うっくくく、やっぱ予想通りだったわね……。ここまで送ってきた甲斐があったわ。

さ、面白いものも見られたし、こっちも帰ろうっと」

 両手を組み合わせて大きく伸びをすると、軽やかな足取りで海も中庭を後にしたのだった。

 

 

 

 

   SSindexへ                                                                                          2012.11.25 up

☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆.。.:*・°☆

タント…地球のタヌキに似た動物。ダイハツ タントより

 

 

★★あとがき★★

何故にコアラねたなのかといいますと・・・

当サイトとも相互リンクして下さってる風を感じての管理人さんである3児の母さまが

最近スマホのイヤホンジャック作りに凝ってらっしゃいます。

ご本人はガラケー使いさんなんですが、iphoneユーザーの某さまの為にトライされていて

フェ風で2点ほど完成されたとのこと。

で、所用でお逢いしたときに「ランティスで作って差し上げますよ」とのうれしいお申し出だったのですが

ここでどえらい問題が・・・・

iphoneのジャックは上部にあって、可愛いアクセも市販でたくさん出てるのを見てました。

電池もちが極端に悪いし、スマホで音楽聞く習慣がないんでまるっと気にしてなかったんですが

XPERIA Acro (so-02)のイヤホンジャックって・・・・横にあったんですよねorz

上にあってこそ、立っててもよし、寝そべっててもよしですが

横って・・・横って・・・・(悩)

あまり横に出張っても何かと引っかかるだろう的な話の流れから

スマホにしがみつく形状になるか・・・?ということになり

その格好って・・・・コアラ?ということになりまして(滝汗)

樹の上で寝てるとことか、あまり鳴かない(しゃべらない)とことか・・・

頂戴したラフはこちら

 

ああ、超絶カッコいい系ランティスがお好きな皆さん、すみません ぺこ <(_ _)>

当サイト的には、こうして弄られるランちゃんもありかな〜。。。みたいな

(やーっ、石投げないでぇぇぇ!!)