before 不倶戴天の・・・


 「なんだそれは?」
 光がベビーベッドの柵になにやら取り付けているのを見とがめてランティスが尋ねた。
  「これ? 『メリー』って言って、お座りがまだの赤ちゃんが、寝たままでも楽しい

おもちゃなんだよ」
 苦労して柵に支柱を固定した後、竿の先に傘のような部品を取り付けながら

ランティスに説明する。
 「この棒の先にぬいぐるみを取り付けるんだよ。これなら、まだおもちゃが持てない

赤ちゃんでも、よく見えるでしょ?」


   ぬいぐるみ・・・走るはずのない悪寒がランティスの背を襲う。


  「ランティスも手伝って。これがそのぬいぐるみ。海ちゃんがデザインして、風ちゃんが

縫ってくれたんだ」
そう言ってふわふわで丸くて耳が付いたものが手渡される。

 愛妻の頼みだ、吊るさねばならない・・・・・。ランティスはうつろな瞳で作業を進めた。

 「もう〜ランティス、よく見てよっ。逆さまじゃないか」

 ベッドに仰向けに寝ている赤ん坊から正しく見えるのはこの方向じゃないのかと

主張したかったのだが、他に思うところがなかった訳でもないのでその言葉は喉の奥で

消えた。光は小さくふくれ、付け直そうとしたが、ぬいぐるみからはみ出た糸が骨組みに

絡まり、無理して取ると折角作ってもらったぬいぐるみが破れてしまいそうだったので、

取るのを諦めた。

 そうして我が子の頭上で「吊られた」ぬいぐるみが回ることになる・・・・・
 
 もう一つ、ぬいぐるみが残っていた。ランティスはそれを掴むと棒の先の部品で挟んで

止め付ける。それはぽよんぽよんと棒のしなりを利用して跳ねた。

 『「デンドウ」なんだろうか・・・』以前自動で動くおもちゃを光がそう説明していたことを

ぼおっと思い出していた。

 「わあー!ランティス、何やってるんだ!」

 慌てる光の声にはっと引き戻される。

 「生き物は吊っちゃだめだったら」

 ぬいぐるみに見えたのは例の失礼な生き物だった・・・
(まだ居たのかこいつ・・・)
そのまま吊って干しておけばいいとアクマが囁いた。


 ・・・・・当然のことながら、生き物のほうはこの国唯一の魔法剣士さまの目を盗んで

とんずらを決め込んだので、ところどころおもちゃのついてない棒がある、へんてこりんな

メリーが一人息子のベビーベッドの上で回ることになってしまったのだった・・・・・






ふと、モコナモドキメリーを思いつき、3児の母さまに絵をおねだりしたところ
さらさらーっとつづってくださったので、ソレを元に構成しました

                                           2012.3.24

                                           web拍手より再掲

 

                                           
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レヴィンが産まれてからのランティス&光ファミリーの日常のひとこま(笑)

これの後日譚をラン光同盟の投稿強化作戦に寄稿させていただきました。

ランティス光同盟のギャラリー内⇒ランティス×光 投稿強化作戦

(公開までしばらくお待ちください 2012.3.24記)

 

        このお話の壁紙はさまよりお借りしています