New Year's party くらいしす

 

 

 年の暮れもおしせまったある日、光はクローゼットに処分する物がないか

 

どうかを検分していた。

 

 ランティスの物をチェックしていた光の手が止まる。

 

 「あれ・・・これって、まだあったんだ・・・」

 

 リンゴーン♪と鳴り響く呼び鈴に、聞こえるかどうかも怪しいのに『はーい!

 

ただいまー!!』と大きな声で答えて、光がパタパタと駆けていく。

 

 光が玄関にたどり着くよりも先に、一人息子のレヴィンが鍵を開けて客人を

 

迎えていた。

 

 「みーちゃん! ふーちゃん! こんにちはっ」

 

 光が呼ぶときの「海ちゃん」「風ちゃん」を真似ているつもりらしいが、

 

どうにも舌がついていかないようだ。

 

 「レヴィン、元気にしてた〜?」

 

 挨拶してにこにこっと笑った人懐こいレヴィンの頭を海がくしゃくしゃに撫でた。

 

 「もう、レヴィンったら! 勝手に開けちゃ駄目って言ってるでしょう?

 

海ちゃんや風ちゃんならいいけど、怖い人だったらどうするの?!」

 

 「みーちゃん、ふーちゃんだもん!」

 

 「光さんこんにちは。ドアを開ける前から声でおわかりになってたみたいですから、

 

そんなに怒らないであげてくださいな」

 

 「ドアのむこうにみえてたもん、みーちゃんとふーちゃん…」

 

 そこにあるのは木製のドアで、覗き窓のひとつもない。

 

 「見えてたってどういうことなの…? 気配とか判るのかしら?」

 

 「どうなんだろ…。あ、玄関先でゴメンね、入って入って♪ クローゼットの

 

整理してたから散らかってるんだけど…それよりどうしたの? わざわざ二人で

 

ここまでくるなんて珍しいよね」

 

 「召集令状が出ましたのよ、ランティスさんに」

 

 「召集令状!!?? どこが!? 誰が攻めてくるの!!??」

 

 チゼータともファーレンとも、そしてもちろんオートザムとも問題となるような

 

案件はなかったはずだ。それなのにいったいどういうことなのだろうかと光が

 

めまぐるしく思い巡らせる。

 

 「違う違う、そんなきな臭い話じゃないわ。新年会よ、セフィーロ城の。

 

ランティスちっともかくし芸やらないからフェリオが命令書を書いたのよ」

 

 「そ、そこまで・・・? 有志参加じゃないの?あれ…」

 

 「だってねー? うちの引きこもり系人見知りのアスコットだって引っ張り

 

出されてるのよ? いい加減一度ぐらいはやんなきゃって話」

 

 「ううー、命令されたってネタがないと思うよ? そういうの…」

 

 「それにしても今頃不用品処分なのですか?」

 

 「んー、ランティスが家でゆっくりしてるときはバタバタしたくないしね。

 

いまオートザムに出張中だから」

 

 「それもあるからいま届けにきたのよね。いる時は渡しにくいから」

 

 「酷いっ! それ、私に説得しろってこと!?」

 

 「『命令書』っていう印籠があるじゃない」

 

 「うーん、クリスマスならサンタのコスプレ出来たんだけどなぁ…お正月は

 

ネタがないよ」

 

 「サンタのコスプレですか!? それはやはりレヴィンさんの為に…? 

 

ぶっきらぼうなように見えて、お父様していらっしゃるんですねぇ」

 

 感心する風に光が「あははは」と苦笑した。

 

 「違うよ。レヴィンには夜中にこっそり枕元において渡してるもの。昔ね、

 

イーグルにいたずらされて気づかないうちにコスプレさせられてたんだよ、

 

ランティス」

 

 「コスプレして気づかないって、ぼんやり過ぎない…?」

 

 「そうでもないよ。あ、そのときの衣装、さっきたまたま見つけたんだ。

 

見せてあげるよ」

 

 三人分のお茶とレヴィンにブイテックの生ジュースを用意してから、光が

 

クローゼットに姿を消した。勝手知ったる友の家。海が香茶を淹れていると、

 

くだんの衣装を手に光が戻ってきた。

 

 「あの…、どう見ても真っ白なんですけど、それのどこがサンタのコスプレ

 

なんでしょう…?」

 

 小首を傾げた風に海も頷く。

 

 「普段の神官モードと変わんない…。珍しくファーがついてるぐらいかしら。

 

寒冷地仕様?」

 

 「一見真っ白なんだけどね。特殊染料だかで染められちゃったらしくって…

 

毎年クリスマスに中庭のツリーに飾りつけてるオートザム製のLEDイルミ

 

あるでしょ? あのライトが当たると真っ赤に変わるんだよ、ファー以外が…。

 

それでもうランティスが『捨てる』って言ったのに、『破けてる訳でもないのに

 

粗末にしちゃ駄目だ』って怒ったから、ずっと置いてたみたいなんだよね」

 

 「クリスマス過ぎるとサンタねたはちょぉっと外してるかなー・・・」

 

 「真っ赤に、なるのですか…」

 

 何故だか風の眼鏡がきらりと輝いていた。

 

 「私、いいことを思いつきましたわ♪ ランティスさんが無理なく出来そうな

 

ものがありましてよ?」

 

 「ホントに!? 風ちゃん、教えて教えて!!」

 

 「まずファーを外してしまいましょう。海さん、このぐらいのサイズのボタンは

 

お店で扱ってらっしゃいませんか?」

 

 「わぁ、ずいぶん大きいわね。さすがにそれはないと思う。コスプレだけの

 

ためなら、ボール紙みたいなのを布でくるんでみせるのもありなんじゃない?」

 

 「ではオレンジ色の布を用意して下さいな。それで包みボタンを作りましょう。

 

このマントの幅なら切って繋げばそれなりの長さにもなりますし、二本は余裕で

 

とれますわね。長く出来たら同じオレンジに染めてしまいましょう」

 

 「・・・二本取るのはどうしてだ?」

 

 「それはもちろん光さんにもおそろいでやっていただこうと」

 

 「でぇぇぇぇ!? なんでっっ!?」

 

 「あら、旦那様だけにコスプレさせるなんて冷たいことおっしゃるんですか?

 

光さんがご一緒のほうがランティスさんも心強くていらっしゃるはずですわ」

 

 もしやこれは進んで地雷を踏んづけに行ってしまったのだろうかと、たらりと

 

冷や汗をかいていた。

 

 「会場にはオートザム製LEDをスタンバイさせますわ。光さんには最初から

 

赤い衣装を着ていただきます。そのほうがランティスさんへのミスディレクションに

 

なりますものね」

 

 着々と決定されていくことに、光はもはや口を挟む余地もない。常であれば光の

 

隠し事などあっという間にランティスに見破られるのだが、生憎オートザムからの

 

帰国は大晦日遅くの予定だった。

 

 「うわぁぁぁ・・・・・ランティス、ごめんなさーい・・・」

 

 

 

 

 

 泣き言まじりの詫びもオートザムまでは届かなかったらしく、帰国したばかりの

 

ランティスは妻にまでハメられた挙句、サイボーグ009のコスプレなるものを

 

する憂き目に遭っていたのだった。。。。

 

 

 

                   2014.1.1

                                              

                   2013.1.1upのweb拍手より

                   一部改稿再録

                   009 RE:CYBORG鑑賞記念・違

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                          このお話の壁紙はさまよりお借りしています

 

 

 

ランちゃんがサンタコスプレしたのは

恋人がサンタクロース と

サンタ と 天使   アクマ が 笑う夜 のあたりです

 

書きたいネタはあるものの時間と才能が追いつかず・・・

新年早々旧作でお茶を濁すダメダメ管理人です

実はweb拍手を書き上げたときに描いて頂いてたコスプレイラスト

貼り忘れてたというさらなるダメッぷりです

すみません、3児の母様(_ _(--;(_ _(--; pekopeko