◆◇◆SanaSEED 5周年企画◆◇◆

MAGIC KNIGHT RAYEARTH SPECIAL@Sanaさま

                           

ランティスx光同盟にも参加されている、SanaSEEDさまの5周年企画に

参加させていただきました(≧∇≦)/  

  

やさしさのお題10の 

 

7. ぎゅーっ。  を CBS&CRSバージョンでお送りします

 

 

 

 

 

 

  ぎゅーっ。

 

 

 ――ランティスは光を抱きしめるのが好きだった。

 

 二人がいわゆる「お付き合い」を始める前から、事あるごとに(いや、なくてもだが)彼女を腕の中に

納めては、光以外の女性陣の顰蹙を買っていた。だが当の光が少しも拒まなかったので、当然の如く

ランティスは外野を無視することにしていた。

 

 まだ光の心の行方が定かではなかった頃から、「お昼寝の木」の上でランティスは光を膝の上に座らせて

ふんわりと抱きしめていた。昼寝のときに膝の上に乗せるようになったのには、ランティスにしてみれば

正当な理由があった。光の寝相があまりに悪すぎたせいだ。

 なにも蹴飛ばされるとか、殴られるとかいうのではないが、光は熟睡すると前後に傾ぐ癖があった。

木の枝の上でそれをやると、当然落下することになる。こちらも熟睡している状態から、落ちかけた光を

抱きかかえて飛び降りるということが四、五回も続くと、さすがに堪らなくなってきた。その日もまた、頭が

ガクンとのけぞった拍子に後ろに落ちかけた光を右腕で抱きとめると、ランティスはそのままお姫様抱っこで

かかえあげ、膝の上に座らせた。

 「お前の寝方は危なすぎる。もう、ここで寝てろ」

 ランティスの執務室で二人きりのときはいざ知らず、仮にもオープンスペースでこんな風に膝の上に

乗せられて、光はネコミミをぴょこんと出して慌てていた。

 「あの、えっと、重いから、私、下におりるよ」

 「別に重くない。…悪い、もう寝かせてくれ」

 三晩連続で夜回りに出ていたというランティスは、光を抱き込むとそのまま眠りに落ちていった。

 「私が、寝られないよ…」

 そう言った光も、結局ランティスの鼓動の音に誘われて、そのままぐっすりと眠り込んでいた。

 

 今日も彼の胸に頭を預けたまますやすやと眠っているかと思ったら、不意に光がランティスの顔を見上げた。

 「どうした?」

 「ランティスって、私のこと『ぎゅー』っとするの、好きだよね?」

 何か余計な入れ知恵でもされてきたのだろうかと、ランティスの答えも慎重になる。

 「あぁ」

 「どうして?」

 「それは…、ヒカルのことが好きだからだ」

 「イーグルのことも好きだよね?ランティスは」

 仮にも告白の言葉を口にしているのに、何故ここで他の男の名前が出るのかと、この少女の天然記念物級

(ヒカルたちが暮らす国での珍しい物に対する賛辞なのだそうだが←いや褒め言葉か、ソレ?)鈍さには、

しばしば脱力感を禁じ得ない。

 がっくりとして、すぐには答えないランティスに、さらにとんでもない質問が浴びせられる。

 「イーグルのことも『ぎゅー』っと、したりするのか?」

 「しない!!」…と即答出来ない自分の悪癖が呪わしかった。先週、イーグルの見舞いにやってきたザズに

引っ掛けられて、きつい酒をしこたま飲まされた挙げ句、寝たままの親友を抱えこんで離さなかったことを、城の

誰かが話してしまったのだろうかと、絶望的な気分になる。

 ランティスが答えないことに、愛らしい光の表情がかげる。それに焦って、なるべく誠実たらんとランティスは

言葉を選んだ。

 「…意識的には、しない」

 「ふぅん。そっか」

 彼が恐れていた「無意識にならするのか?」という追及が来なかったことに、内心安堵の息をつく。

 「ホントはね、海ちゃんたちによく言われてるんだ。『光は、警戒心がなさすぎる』って」

 まあ、俺がウミの立場でも同じ忠告をするだろう、とは口が裂けても今は言わないが。

 「それで?ヒカルはどうなんだ?」

 「んー。私はランティスに『ぎゅーっ』とされるの好きなんだ。すごく、あったかいから」

 いまのセフィーロはトウキョウでいう、まだ春先…。俺は暖房代わりかと複雑なランティスの胸中に、

光の言葉がふわりと降りてくる。

 「なんていうかなぁ…。上手く言えないんだけど」

 そう言いながら、光はふたたびランティスの胸に頬を寄せるようにもたれ掛かる。

 「私のこと、すごく大切にしてくれてる気持ちが、あふれてくる感じがするの。時々は溺れちゃいそうなぐらい。

だけど他の人がこんな風にするのは、絶対にイヤだ…。私、わがままなのかな?」

 それは、光が初めてランティスに対して見せた独占欲。

 「ヒカルにはもっとわがままを言って欲しいぐらいなんだが」

 「知らないよ?持て余しても…」

 くすっと小さく笑った光の耳元に、ランティスは吐息で囁きかける。

 「俺のほうが、わがままだ」

 心持ち身体を離して、右手で光の顎を掬い上げる。ほんの少し驚いたように見開かれた紅玉の瞳が、

ランティスの瑠璃色の瞳を一瞬みつめ返す。そのまぶたがきゅっと閉ざされると、光の身体は微かに

こわばっていた。それでも逃げ出さないのは、彼を受け入れようとしている光のせいいっぱいのサイン。

彼女がおびえてしまわないように、ランティスはそっとくちびるを重ね、光の華奢な身体をしっかりと抱きしめる。

おずおずとランティスの背中に回された光の両手は、彼の白いマントをぎゅーっと握りしめていた。 

 

 

 

 

                                                   2009.10.28up

 

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ランティス → 光 から ランティス x 光 に なった瞬間を書いてみました。

心情的にはこれ以前のある事件で、うちの光ちゃんははっきりとランティスへの想いを自覚しますが、なかなかそこまで書く手が進まな〜い(汗)

この後に、もう1本書いちゃってるんで、ちっとも本編が進みません (^.^; オホホ

 

このお話の壁紙はさまよりお借りしています (2010.2.6壁紙変更)