ラストシーンはあなたと。。。

 

 

  いつものように週末を利用してセフィーロに来た三人娘だったが、あいにく

彼女らの想い人はみなそれぞれに所用を抱えていた。彼らがセフィーロを

支える中核であることを十ニ分に知っているので、「私と仕事とどっちが大事なの!?」

なんて我儘は言えない。

 光と海に「城下町に遊びに行こう」と誘われたが、風はそれを断っていた。学校の

同級生に借りた小説がことのほか面白く、もうクライマックスにさしかかっていたからだ。

他にも借りたがっていた子が居たので、週明けには返したいと思っていた。

 「この本を読むのなら…」

 どうせなら一番相応しい場所で物語を満喫しようと思い立ち、本を手にして風は建物の

外へと出て行った。

 

 

 「どこに行ったんだ、フウは……。あ…」

 ようやく仕事を片付け風を捜し歩いていフェリオは、まるでその樹の精霊のように

溶け込んでいるその姿に危うく通り過ぎてしまうところだった。

 よほど夢中になっているのか、すぐ隣に腰を下ろすまで風は顔をあげもしなかった。

 「悪い…。待たせたな」

 「……あ、フェリオ…。もう少しだけ待ってくださいね」

 本は物語の終盤・・・その中に引き込まれてとっぷり浸りこんでいる風は、フェリオに

横顔を見せるばかりで、目はずっとページを上から下へと辿り続けていた。

 もちろん風は横顔だって可愛い。ずっと見つめていても飽きることなんてない。それでも

フェリオはこの状況にだんだん堪えきれなくなってきていた。

 すぐ隣に居るのに、まるでそこには居ないようなそんな感覚に――。自分でも気づかぬ

うちにフェリオはその行動に出てしまっていた。

 「何なさるの!?」

 突然、読んでいた本を取り上げられた風が、怒ったような、戸惑ったような声をあげて

フェリオに向き直った。

 そういう顔もやっぱり可愛らしいと思えてしまうフェリオはさらりと言ってのけた。

 「俺のそばに居るときは、フウの瞳には俺を映して欲しいな」

 

 そう言ったフェリオの指が風の顎を掬い上げ、小説のエンディングは二人で実演する

ことになる予感がした。

 

 

 

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                                                                                            2012.6.17 再掲

 

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私にとっては初のフェ風SSとなりました。2010年風誕記念

ラン光じゃなくてごめんなさいです                    (2012.6.17)

 

 

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