キャプテンズオンリーにようこそ♪

 

 キャプテンズオンリー・・・それはオートザム軍の各艦の艦長のみで

                交わされる非公式な作戦会議

                慣例として、副長・副官以下に

                口外してはいけない決まりになっている・・・

 

 

 「あ、バニーちゃんの顔が変わってら…」

 ノマド救援艦隊が繰り広げたシャトル争奪戦(ちょい大袈裟・笑)を乗り越え、艦長室に

籠もって特秘回線でアクセスした軽巡航艦シリオンの艦長が苦笑いした。

 巡航艦ウイングロード艦長オッティ・オースターの新妻・ヴィーによく似たバニーちゃんが

にっこりと笑う。

 ≪ウイングロードのキャプテンズオンリーにようこそ♪あなたの艦の艦名、船籍番号、

あなたのIDを入力してください。3回間違ったら通信機が爆発します♪≫

 「するかい…。やれるもんならやってみろ。しかしいいのかねぇ、自分の嫁さんだからって、

提督の孫にこんなカッコさせて…」

 ぶつぶつ言いながら必要事項を入力すると、仮想空間にしつらえられた会議室に入り込む。

 

 『遅いぞ、シリオン』

 キャプテンズオンリーの席では、お互いを艦名で呼ぶのがならわしだった。ログイン状況を

確認しつつシリオンがビーゴに答えた。

 『シエンタもまだだろ。俺たちは貧乏くじ引いて、第一艦隊のシャトルぶんどりに行ってたん

だからしゃあねぇじゃん』

 『くじに弱い己を恨め。他の艦載機放り出して、積めるだけのシャトル積み込めってオーダー

だったからな』

 口の悪いロッキーに肩を竦めつつ、デュエットが言った。

 『それにしても、救援活動でキャプテンズオンリーの召集かける理由が判んないね』

 『遅くなってしまって申し訳ありません』

 この席に集う艦長では一番年下のシエンタが入室した。

 『シャトルは確保出来たか?』

 クロスロードが大きなミッションに初参加となるシエンタを気遣った。

 『アベ提督が一声かけてくださいましたから、受け取りに行っただけのようなものです』

 シエンタの言葉にロードペーサーが軽くシリオンを睨んだ。

 『お前、ひとりで苦労したようなこと言って…』

 『いや、俺にはそんな美味しい話はなかったっつの』

 『当たり前だ。就任3年目でそのぐらいの交渉がサクッと自力で出来なくてどうするんだ。

シエンタはまだ着任したばかりだろ』

 ようやく入室した召集主のウイングロードが呆れたように言った。

 『そういう可愛げのないコト言ってると、バニーちゃんのこと、ヴィーと提督にばらすぞ』

 思わずそう言ったシリオンにロードスターが釘を刺す。

 『キャプテンズオンリーはオフレコだ、バカ』

 『……そうでした』

 『ま、それは置いておくとして、本題に入る。≪尋ね人≫の依頼だ』

 ウイングロードにデルタが言い返す。

 『≪尋ね人≫?そりゃよそのナワバリじゃないの?』

 『まずはデータを送るからそれを確認してくれ』

 『おおーっ!噂の幽霊にしては、クリアなホログラムだな』

 ビーゴの感想に、シリオンが同意する。

 『それに目撃情報のホロより、カメラ目線だしすっげー可愛いじゃん。俺、デートに

誘っちゃおうかな』

 『ばーか。生きてる女を口説け!』

 ロッキーはシリオンに容赦ない言葉を浴びせ、クロスロードは冷静にウイングロードに尋ねた。

 『ご丁寧に身長、体重まで…。ネタ元はどこだ?ウイングロード』

 『しかしこの緊急時に、幽霊探しなんてやってる場合か?人ならまだしも…』

 デュエットがぶつぶつと零していた。これも作戦会議のうちだというのに、同世代ばかりの

気安さで古参幕僚の耳に入ったら譴責されても致し方のない会話内容だった。

 『口説くなよ、人妻だから』

 イーグルとの会話を棚に上げて、ウイングロードがたしなめた。

 『幼な妻の幽霊?訳アリっぽいなぁ…』

 『よく見ろよ。年齢も送ったろ?もうじき23歳なんだぜ。それを写したのは7月2日。ネタ元は

イーグルだ』

 こちらも乗り気のビーゴにウイングロードが苦笑した。

 『7月2日にイーグルが、ね…』

 意味ありげなクロスロードの呟きに誰も何も突っ込まないのは、少なくともこのメンバーは

その日イーグルに何が起きたのかを把握していることを示唆していた。

 「標準時間7月4日昼前にヴィラ=フィオーレから消えて、1408にデリカ、1859にトッポ、

2214にタウンビーで目撃されたあとの消息がつかめない。タウンビーに接近したら、全艦

センサー系をフル稼働にして、≪飛び込みのお客人≫がいないか注意しておいてくれ」

 『それで、飛び込んできたら?』

 シエンタの素直な問いかけにウイングロードが答えた。

 『「捉まえててください」ってのが、イーグルのオーダーだ』

 『出たり消えたりするのにどうやって?幽霊の捕まえ方なんて訓練は受けてないぜ』

 ロッキーが肩を竦めるのも無理からぬ話だった。

 『とりあえず説得を。タウンビーで半日以上足止め食ってたはずだし、正気に戻ってると

いいんだがな』

 『幽霊に正気も何も…』

 『幽霊じゃないよデルタ。生きてるはずなんだ。どうやら魔法らしいから』

 『魔法?胡散臭い話だな。イーグルのオーダーじゃなきゃシカトもんだぜ』

 『幽霊にしろ生きた人間にしろ、どうして彼女が艦隊に飛び込んでくると踏んでるんだ?』

 ロッキーとロードペーサーのもっともな発言にウイングロードが答えた。

 『ノマドに行きたがっているからさ』

 『この時期になんて物好きな…』

 『ノマドの状況の詳細をホロと同送しただろう?ちゃんと読めよ、デュエット』

 『作戦会議室で聞いてないネタがごろごろあって、イーグル差し置いて居眠りしちまったかと

焦ったっつーの』

 『たまたま居合わせた魔法使いが都市を守ってるんだって?』

 シリオンの言葉にクロスロードが苦笑した。

 『また魔法ですか…。ああ、その人に逢いたがってるんでしょうか』

 『そういうこと。ちなみに≪あの≫魔法使いだ』

 『≪あの≫??どの?』

 『イーグル絡みで魔法使いっていうと、どうしてもあいつを思い出すんだよなぁ』

 『我らがイーグルの不敗神話の掠り傷か…』

 シリオンは疑問符を飛ばしまくり、デュエットとロードスターはしみじみと言った。

 『その魔法使いだよ。≪尋ね人≫はその嫁さんだ』

 『『でぇぇぇぇ!?』』

 期せずしてビーゴとユニゾンで驚愕の雄たけびをあげたあと、ぼそりとシリオンが付け加えた。

 『…黒魔術の犠牲者か……』(超失礼・笑)

 『それにしても、ノマドは魔法使いに人気なのか?古狸が≪ノマド・クライシス≫の再来に

なれば…なんて、物騒なこと言ってやがったぜ』

 『≪ノマド・クライシス≫?』

 『お前、近代史サボってたな?』

 またしても疑問符を飛ばすシリオンをクロスロードが軽く睨んだ。

 『人聞きの悪い…。人間得手不得手はあるだろ』

 『そんな物を本気で待っていたなら、軍法会議ものじゃないか。イーグルが動けなかったのを

いいことに』

 『「初動が遅れたのは司令官代理のご指示がなかったからです」ってか。子供の言い訳

並だな』

 憤慨するロードペーサーにロードスターが皮肉っぽく答えた。

 『アベ提督が提唱しても「現場に行けない者は黙ってて貰おう」的あしらいだったからな。

そんなふざけた考えの古参幕僚がいるのがはっきりしてるならなおさらだ。この件はくれぐれも

オフレコってことでよろしく。以上、解散!』

 

 

 

 ・・・一般のキャプテンズオンリーはもっと真面目です。多分・・・・・

 

 

 

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 ノマド・クライシス…メルツェーデスが昏睡に陥いるはめになった事件のこと

 

出席者は以下のとおり (召集者はウイングロード艦長)

巡航艦クロスロード、ロードスター、ロードペーサー艦長

軽巡航艦デュエット、デルタ、シリオン、ビーゴ、ロッキー、シエンタ艦長

キャラの書き分けさっぱりですね。五隻ぐらいにしとけばよかった…orz

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